[アーカイブその4]馬龍、語る。「確かに世界選手権で優勝したことは階段を一段上がったことだけど、これは始まりでもある」
西村卓二。なぜこの人は恐れられ、そして愛されたのか。
卓球王国2023年12月号掲載「クローズアップ」
数多くのチャンピオンを育て、日本卓球界に栄光の歴史を刻んだ東京富士大。
来年3月の活動停止を前に、最後の団体戦となった10月7日の関東学生リーグの入れ替え戦。
そこで見せたのは魂を揺さぶるような感動的な勝利だった。
51年間、このチームを率いた西村卓二の目に涙が光っていた。
Text by
今野昇Noboru Konno
数多くのチャンピオンを育て、日本卓球界に栄光の歴史を刻んだ東京富士大。最後のチーム戦のラストで、劇的な勝利。「おれが泣いちゃだめでしょ。ほんと、上野の試合を見ていたら泣けてきたよ」
その瞬間、大応援団から歓喜の叫び声が聞こえ、誰もが感動で涙をこぼした。
10月7日の関東学生秋季リーグの1部と2部の入れ替え戦、東京富士大対青山学院大の試合。東京富士大卓球部は富士短期大としてスタートして60年。342勝268敗が関東学生リーグの成績で、監督51年目の西村卓二の成績は319勝235敗。
この日、来年3月に活動を終える東京富士大にとっての最後の団体戦は、ラストまでもつれ込んだ。富田高出身の上野彩香梨が、高校の2年先輩の庄易と対戦。インターハイ3位だった庄易に挑む、同じ高校でもインターハイでの実績のなかった上野。卓球の神が舞い降りたかのように、上野は東京富士大での2年間の練習の成果を試合で見せた。観客席に陣取った70人ほどの大応援団の熱い声援も彼女の背中を押した。ベンチの選手たちからひとり離れたところに座り、視線を送る西村。顔の汗を拭うふりをしながら何度も涙を拭いた。