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【伝説のプレーヤーたち】 林忠明「卓球はこれで最後」

The Legends 第2回 林忠明(1952年世界男子複チャンピオン)

卓球王国2012年9月号掲載

1952年の第19回世界卓球選手権・ボンべイ大会で、男子ダブルスチャンピオンとなった林忠明。
12歳で卓球をはじめた時、ラケットはまだコルク貼りだった。「卓球はこれで最後」と一度は未練を断ち切りながら、5年半の軍隊生活を経て、再びラケットを握り、日本卓球界の復興に尽くした。

Text by

今野昇、柳澤太朗Noboru Konno & Taro Yanagisawa

◉はやし・ただあき
1920年1月2日生まれ、東京都出身。12歳の時、勤務先の簡易保険局で卓球と出合う。昭和15年度全日本選手権でベスト8に入った後、5年半の軍隊生活を経験。戦後、再びラケットを握り、昭和25年度全日本選手権で硬式・軟式ともに優勝。日本が初めて参加した52年世界選手権ボンベイ大会では藤井則和とペアを組み、男子ダブルス優勝を果たした。2017年8月死去

はじめは卓球を選手としてやるつもりはなかった。野球か卓球か、ずいぶん迷いました

林忠明、92歳(2012年当時)。

 「生きる日本卓球史」と言っても過言ではない。今、卓球界の「人間国宝」を選ぶとしたら、この人しかいないかもしれない。

 戦前からトップ選手として活躍し、日本が世界選手権に初めて出場した1952年世界選手権ボンベイ大会で男子ダブルス優勝。「救聖(きゅうせい)」今孝(こんたかし)、「史上最強の攻撃選手」藤井則和、「日本人初の世界チャンピオン」佐藤博治(ひろじ)。伝説の名手たちと同時代を生き、時に強打で渡り合い、時に合宿所でともに汗を流してきた人である。

 日本が7種目中4種目を制したボンベイ大会。一番最初にタイトルを獲得したのは、林と藤井則和のダブルスだった。林・藤井ペアは日本卓球界が生んだ初の世界選手権優勝者。さらに、日本のスポーツ選手が世界選手権で優勝するのも初めてだった。

 「世間では、ボクシングの白井義男がダド・マリノ(アメリカ)に勝って、世界フライ級王者になったのが、日本初の世界王者だって言う人もいる。でも、本当はぼくらなんだ。ぼくらのほうが3カ月くらい早いんだ」

 穏やかな口調の中に、譲れない自尊心が垣間見える。

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