[PEOPLE]江戸川区のバリアフリーの卓球場オーナー、宇田川貴文「これからも地元に貢献していきたい」
[T.T Labo 代表]
[うだがわ・たかふみ]
1963年9月29日生まれ、東京都出身。関東一高、駒澤大に進み、高校時代は東京代表で国体2位。唐橋卓球で31年間勤務し、小売、外商、卓球ショップアドバイザーなどを経て、2014年に地元の江戸川区葛西に卓球場「T.T Labo」をオープン。江戸川区卓球連盟副理事長
31年間、唐橋卓球で卓球界のいろいろな人に出会えたし、商売をしているお店との付き合いも深く、人のつながりも数多くできた。ありがたいですね
東京都江戸川区に10年前にできた卓球場「T.T Labo」。代表を務めるのは宇田川貴文、60歳。卓球界では顔が広く、日本最大の卓球専門卸問屋「唐橋卓球」で31年間勤めた。
10周年を迎える「T.T Labo」は江戸川区卓球連盟の事務局も兼ねていて、代表を務める宇田川は関東一高時代には国体の少年男子の東京代表となり、2位になっている。駒澤大に進むも、大学をやめる時に、前年まで大学の卓球部監督を務めていた唐橋卓球の先代社長・唐橋博に声をかけてもらい、入社。小売り、卸し(問屋)、営業など、ひととおり経験し、最後には会社の役員も務めた。また、「とんねるず」と「THE ALFEE」などを巻き込んだ90年代初頭の卓球ブームの時も裏方で支えていた。
唐橋卓球を辞める数年前から、アパート経営をしていた母がマンションに建て直すのを機に、実家に戻るように言われ、それならと「2階を卓球場として貸してください」とお願いしていた。
唐橋卓球では最後の数年間、全国の卓球ショップ、卓球場を立ち上げる時にアドバイスをする仕事をしていた。延べで100件以上の卓球ショップと卓球場に関わった。「北海道から沖縄まで全国を飛び回っていました。卓球ショップ、卓球場を作りたくてもやり方、経営のノウハウのわからない人が多かった。建物、照明、内装を一緒に考え、ショップとして仕入れる商品の販売セットを作っていった。
箱(ショップ・卓球場として借りるテナント)がある場合でも、1週間つきっきりでその場所で寸法を測ったり、地域性を考えたショップのノウハウをアドバイスさせてもらいました」(宇田川)。
「きっかけは、唐橋卓球に『卓球場のフロアマットを売ってくれ』という依頼が来て、それを売るところから卓球場作りが始まった。そこから卓球場のデッドスペースに用品を置こうという話になり、口コミで広がったんです」
建て直した実家のマンションの2階の卓球場には、自らが経験した卓球場作りのアイデアを盛り込んだ。床の桜の木は二層にして、天井も二層にしつつ完璧な防音にした。また、フロアの真ん中に柱が来ないように外側の柱を太くした。
加えて、オープンの時から車椅子卓球の日本代表である渡邊剛(シスコシステムズ)が練習したいと言っていたので、マンションの玄関から卓球場までを段差なしのバリアフリーにした。卓球台も車椅子対応なので、聞きつけた区役所の人も見学に来るほどだ。
江戸川区には連盟登録者が1100名ほどいるのだが、卓球のできる施設が少なかった。地元の愛好者にとっては待ちに待った卓球場が完成し、オープン当初から大勢の人が来てくれた。現在、この卓球場の会員数は200名を超える。毎日、卓球教室はいっぱいだ。
「31年間、唐橋卓球で卓球界のいろいろな人に出会えたし、商売をしているお店との付き合いも深く、人のつながりも数多くできた。ありがたいですね。そして、今は地元の愛好者に楽しんでもらっています。これからも地元に貢献していきたい」と語る宇田川。
江戸川区卓球連盟の登録や大会の受付も兼ねる「T.T Labo」は、地元に愛される卓球場となっている。
(文中敬称略)