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いざ、パリへ 張本智和インタビュー「1秒たりともメダルがほしいと思ってはいけない」[前編]

中国選手に対しては、1球でもあまいボールがあるとそれがほころびになってしまいます。

2024年7月号掲載

Interview by

中川 学Manabu Nakagawa

写真=中川学 photographs by Manabu Nakagawa

「1秒たりともメダルがほしいと思ってはいけない」

18歳で初出場した東京五輪。
メダルが期待されたシングルスは4回戦で敗退したが、そこからメンタルを立て直し、
団体戦では全勝で日本男子の銅メダル獲得に貢献した張本智和。
名実ともにエースとして迎えるパリ五輪では、「メダルを意識することが、メダルを遠ざける」と言い切る。
その境地に至るまでの話を聞いた。

みんなの意識が「張本が勝つだろう」となるくらい
地力で上回れるようにならなければ
中国選手にコンスタントに勝つことはできないと思っています。

 3年前の東京五輪。大会を目前にして、張本智和はそれまで経験したことのない感情に襲われた。
 「夜中に急に不安になって、練習場に行ってサービスを出し続けたり。不安を打ち消そうとしてやっていましたが、今ならばあれは本来の自分の取り組み方ではなかったと思うことができます」(張本)
 パリ五輪を3カ月後に控えた4月25日。撮影とインタビューのために用意されたNTCの研修室に姿を見せた張本は、「よろしくお願いします」とリラックスした表情で挨拶をしてくれた。
 混合ダブルス、シングルス、団体と、日本男子として初めて五輪の3種目に出場する20歳のエースに、2度目の五輪への決意を聞いた。

●――パリ五輪前の大きな国際大会として2月に世界卓球釜山大会(団体戦)、4月にワールドカップ(個人戦)がありました。まずは釜山大会から振り返ってもらえますか。
張本智和(以下・張本) 中国以外にはすべて勝つことができて、予選グループとはいえタイペイ(チャイニーズタイペイ)戦で林昀儒に勝てたことはすごく自信になりました。
 林昀儒は中国以外で一番強い選手だと思っているので、彼に勝てたという事実はパリを考えると大きいです。前に一度負けているので、これでやっと五分五分になれたというか。高承睿にも初対決でストレートで勝てたので、ランキングが下の選手とは実力差があることも確かめることができました。
●――戸上隼輔選手がインフルエンザのため欠場になりましたが、動揺はなかったですか?
張本 戸上選手と一緒にチームを引っ張っていこうと思っていたので、動揺がまったくなかったかといえば少なからずありましたが、出場できなかった戸上選手が一番悔しかったと思います。
 戸上選手、篠塚(大登)選手、ぼくとパリで戦う3人が力を確かめる団体戦という意味もあったので、その部分では少し残念だという思いはありましたが、その一方で、戸上選手の代わりに出場した松島(輝空)選手が頑張ってくれたので、日本の底力を見せることができたという思いもあります。
●――準々決勝の中国戦については?
張本 前回と同じこと(2022年成都大会の準決勝で王楚欽と樊振東に勝利)をしたいと思って臨みました。しかし、中国も対策してきますし、一度失敗しているからこそ選手もコーチ陣もより準備をしてくると考えていたので、前回よりも厳しくなると思っていました。
 王楚欽との試合では1ゲーム目を取れて、このまま押し通せるかなと思いましたが、最近の王楚欽はゲームを落としても崩れる選手ではなくなっていて、実力で完全にカバーされてしまった。彼のほうがこの2年間でぼくよりも強くなっていると感じた試合でした。

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