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[卓球本悦楽主義2] 真骨頂は随所の哲学的論考。福士の気概に率直な感動を覚える

卓球専門書の愉しい読み方2(卓球王国2004年2月号掲載)

Text by

伊藤条太Jota Ito

「卓球」 

■福士敏光・著 [ 昭和17年(1942年)目黒書店]※現在は絶版

真骨頂は随所の哲学的論考。福士の気概に率直な感動を覚える

 かの荻村伊智朗にも影響を与えた古典的名著である。

 福士は明治四十年青森市生まれ。弘前高等学校時代に既にその名を全国にとどろかせ、東大法学部在学中の昭和二年に当時の全日本チャンピオンの鈴木貞雄に勝ったのを始めとして、日本卓球界の一流選手として活躍した。引退後も理論家、指導者として卓球に関わり、1977年バーミンガム大会では世界選手権対策本部長を務めた。

「卓球」の著者・福士敏光(前列左から二人目)。
77年世界選手権バーミンガム大会では世界選手権対策本部長を務めた

 この本はとにかく論理的な本である。青年時代の荻村伊智朗に影響を与えたのもうなずける。ありとあらゆる事柄を定義し分類しているのだ。

 たとえば、打球点についての分類は、「上昇打・頂点打・下降打・線上打(台と同じ高さ)・線下打」とここまでは普通だが、このほかに、体と打球点の距離によって「近打・遠打」、体との前後の位置関係によって「前打・側打・後打」、コート内かコート外かによって「内打・外打」、理想的かどうかによって「理想的打球点・基本的打球点・補助的打球点・実際的打球点」と詳細を極める。例えばカットの打球点の説明のところでは「ロングに対しては下降打、線上打または線下打。側打または後打。遠打。」と複雑なことこの上ない。しかも、これはあくまで打球点についてだけの分類なのである。

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