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和田なつき:無類の根性と探究心でパリへの切符を一気に引き寄せたシンデレラガール

直前に敗れていた格上に連勝しアジアパラで涙と笑顔の優勝

 急激に国際大会で成績をあげた和田だが、国内ランキングではまだトップに至っていなかったため、国際大会に出場を続けられるとは限らない。そのため、一番確実にパリを狙えるのが、アジアパラ競技大会だった。

 「それまでは卓球がただ楽しかったのが、『負けられない』と思うようになった。でもどんな結果でも笑って終われるようにしたい」。当時、こう語っていた和田は、大一番となったアジアパラ競技大会で、準決勝で吳玫薈、決勝で王婷莛と、いずれも香港のパラリンピックメダリストを下し、涙の優勝となった。

 「パリに行けるうれしさもあったけど、2カ月前の大会で負けていた相手に、動画を見て研究して対策を立てたことで勝てたのがうれしかった。しばらく試合に出なくてもいいというホッとした涙もありました」。表彰台では、うれしさと安堵から来る晴れやかな笑顔を見せた。

2023年10月開催「杭州 2022アジアパラ競技大会」女子シングルス・クラス11表彰。左から王婷莛、和田なつき、吳玫薈、古川佳奈美

卓球との出合いで前向きに。パリでさらに輝くために前進を続ける

 和田が急成長し、チャンスを手にした理由はいくつかあるだろう。ひとつは身長173㎝という恵まれた体格。当初はフットワークが苦手だったというが、細かいステップを強化し、体格を生かした威力あるフォア強打を武器にしている。

 そしてメンタル面も、アスリートとして貴重な資質を持つ。母は「何事にも興味を示す、好奇心旺盛な子です。そしてできないことでも、とりあえず頑張ってみることができる」と評する。

 現在、和田のメインコーチを務める永富聖香も言う。

 「高校時代に初めてレッスンした時に、『今のラケットの握り方のままでは勝てない』と、厳しいことを言ってしまいました。その日は1日中泣きながらの練習となり、『戻す?』と聞くと『やる!』と言う。根性がすごいと思ったけど、正直、2回目は来ないと思っていました。

 でも彼女は1〜2週間後に来て、その時にはグリップが直っていた。少しやって『無理』という選手が多い中で、なつきちゃんは常に『もう少しやる!』と続ける。すごく芯のしっかりした子です」

 和田は巻き込みやしゃがみ込みなど、多彩なサービスを武器にしているが、これは多くの動画を見て研究し、試行錯誤して身につけたものだという。

 負けず嫌いで、やり抜く力を持ち、探究心旺盛。そんな和田を、母と永富が他のコーチや「卓球センター.JP」とタッグを組み「チームなつき」としてバックアップ。こうしてパリパラまで残り3カ月弱となった今、自身にとっての卓球について、そしてパリパラの目標をたずねてみた。

 「卓球を始めたことで、自分に自信を持てるようになりました。以前はずっと悩んでいたけど、卓球で色んな人に出会って、『こんな小さいことに悩んでいたんだ』と思えるようになりました。海外の選手とも『1回試合をしたら友だち』みたいな感じで仲良くなっています。

 パリでは金メダルを獲りたい。苦しい試合でも勝ち切りたい。そのために自分のレベルを少しでも上げたいです。パリは楽しみです」
 辛い時にも逃げることなく、前進し続けることで掴んだパリへの切符。アジアパラで涙の勝利の後に表彰台で見せた、あの笑顔を超えるスマイルを、パリの地で見てみたい。

(文中敬称略)

■わだ・なつき
2003年8月29日生まれ、大阪府出身。中学3年で卓球を開始、翌年(19年)パラIDジャパン・チャンピオンリーグ大会オープントーナメントで、全国大会初出場にして4位入賞。23年パラIDジャパン・チャンピオンシップ大会で初優勝。23年チェコ・台北・台中と国際パラオープンで3大会連続優勝。23年10月のアジアパラ競技大会で優勝し、パリパラリンピック出場資格獲得。24年全日本選手権(一般の部)出場。内田洋行株式会社所属。世界ランキング4位(クラス11/24年6月発表)

★和田なつき 卓球選手 OFFICIAL SITE