【伝説のプレーヤーたち】渋谷五郎 前編「青森は卓球で勝たなければいけない、という時代だった」
The Legends 第6回 渋谷五郎(昭和34年度全日本選手権優勝)
指導者はいない、技術書もない。
それでも1年365日、欠かさずにラケットを握り続け、
カットと攻撃を融合させた、
「シェークハンドラケットを使用した独自のスタイルを築き上げた男。
史上初の全日本チャンピオン」
その称号は永遠に渋谷五郎とともにある。
■Profile しぶたに・ごろう
1937(昭和12)年9月30日、秋田県生まれ。青森県で育ち、西田沢中時代に卓球を始め、青森高3年でインターハイベスト8。明治大2年時に全日本学生チャンピオンとなり、4年時の全日本選手権でシェークハンドの選手として初めて優勝。61年世界選手権にも出場した。現役引退後は明治大卓球部監督として、多くの名選手を指導した
Interview by
今野昇、柳澤太朗Noboru Konno、Taro Yanagisawa
Photo Provided by
渋谷五郎 Goro Shibutani
「自分を変えなければ伸びない。現役時代は常にそう思っていた。自分を変える努力が必要だという意識があった。
選手というのは、新しいことをやるのに抵抗を感じやすい。もしかしたら、自分のプレーがおかしくなってしまうんじゃないかと考えてしまう。でも、変化を恐れていたら未来はないんだよ」
雪国・津軽はこういう人も生むのである。相手の強打を耐え忍ぶ、粘りが身上(しんじょう)のカットマン。そんなイメージと先入観は、ものの見事に打ち砕かれる。
ペンホルダーが当たり前の時代に、ひとり敢然(かんぜん)とシェークハンドラケットのカットスタイルに挑み、築き上げたのは打球点の早い独創的なカットスタイル。しかもカットやツッツキと同じフォームから、突然攻撃へと転じ、対戦相手を混乱に陥(おとしい)れた。