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卓球王国PLUS > 読み物+ > 百年の茅台酒が語る秘話①~松﨑キミ代と周恩来の友情~
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百年の茅台酒が語る秘話①
~松﨑キミ代と周恩来の友情〜

1961年、第26回世界卓球選手権北京大会。

時の世界女王・松﨑キミ代は、中華人民共和国の周恩来総理と出会う。

贈られた1本の茅台酒が伝えるのは、慈愛と友情に満ちた物語。

日中卓球交流の源流をたどる旅に出かけよう。

文=李永亮 text by Nagasuke Li(アジア芸術文化協会 理事長)

翻訳=古屋順子 translation by Junko Furuya

写真提供=松﨑キミ代 photo courtesy of Kimiyo Matsuzaki

「茅台酒のいいものが1本ありますから記念に差し上げましょう」(周恩来)

 「松﨑さん、お父様はお酒がお好きですか」 

 「大好きですよ、毎日晩酌をしています」 

 「それなら、私のところに中国の茅台酒のいいものが1本ありますから、記念に差し上げましょう。解放前に封をされたままの古酒で、今ではほとんど手に入らないものです」 

 これは中華人民共和国初代総理である周恩来と、日本の元世界卓球選手権チャンピオンである松﨑キミ代との対話のひとコマ。

 1961年4月20日夜、北京飯店の宴会場でのことである。

 松﨑キミ代の遥かな記憶の中で、この晩の感動的な場面は生涯忘れられないものだ。 

 第26回世界卓球選手権大会に参加するため、22歳の松﨑キミ代は初めて北京を訪れた。出発前夜、松﨑は世界地図をしげしげと眺めた。東京から北京までどれくらいあるのか彼女は知らなかったのだ。当時、日本と中国はまだ正式な国交回復前だったため、日本代表団は香港を回って深圳に入り、さらに列車で広州を経由して行かなければならなかった。松﨑たち一行が北京の新僑飯店に到着するまでに3日が過ぎた。 

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