呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
[卓球本悦楽主義6] 「スロー、スロー、クイック、クイック」感覚的な独特の打球論が展開。
〈卓球専門書の愉しい読み方6〉卓球王国2004年6月号掲載
Text by
伊藤条太Jota Ito
「卓球」
■野村尭之・著[ 昭和42年 旺文社]※現在は廃刊
「スロー、スロー、クイック、クイック」感覚的な独特の打球論が展開。
荻村伊智朗はその著書「世界の選手に見る卓球の戦術・技術」の中で「古来から日本卓球界では権威者が”卓球には体力は要らない”と教えてきた」と書いている。私はそのように書いてある卓球の本を見たことがなかったのだが、本書がまさにそれであった。
著者の野村尭之(たかし)は大正四年愛媛県生まれ。早稲田大学の選手時代には監督をかねて活躍した。選手としてのピークは遅く、昭和二十六年の全日本軟式選手権シニアの部(35歳以上)で優勝したのを始めとして、ベテランの部(45歳以上)と合わせて軟式で二回、硬式で二回の全日本シングルス優勝を遂げている。指導者としても「チャンピオン・メーカーといわれるほど多くの名選手を育てた」とある。一九七一年世界選手権名古屋大会では日本選手団の総監督を務めた。