呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
[卓球本悦楽主義7] 革新的な内容を丁寧に解説。改革を急ぐ荻村の焦りを感じる
〈卓球専門書の愉しい読み方7〉卓球王国2004年7月号掲載
Text by
伊藤条太Jota Ito
「ジュニアスポーツシリーズ 卓球教室」
■ 荻村伊智朗・著[ 平成元年 成美堂出版]※現在は絶版
革新的な内容を丁寧に解説。改革を急ぐ荻村の焦りを感じる
荻村の卓球本で小学生を対象にして書かれた唯一のもので、監修は朝日小学生新聞。少し難しい漢字にはふりがなが振ってあり、説明のイラストも可愛らしく、いかにもやさしそうな体裁をととのえている。
しかし著者は荻村伊智朗、ただで済むはずがない。いや、それどころか「鉄は熱いうちに打て」と言わんばかりに、他のどの著書よりも思い切った主張が書かれている。
八〇年代は中国の前陣速攻の時代であった。その速さについていけずに敗れた日本を再建すべく、荻村は日本卓球協会の機関誌「卓球日本」「卓球マガジン」などで徹底的な打球点重視の卓球を主張していた。本書でも、先入観のない小学生にその設計思想を植えつけようとしており、改革を急ぐ荻村の焦りさえ感じられる。