呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
[卓球本悦楽主義9] 意気盛んな荻村の濃密な理論が展開。まさに卓球理論書の金字塔
〈卓球専門書の愉しい読み方9〉卓球王国2004年9月号掲載
Text by
伊藤条太Jota Ito
「世界の選手に見る卓球の戦術・技術」 ー前編ー
■ 荻村伊智朗・著[ 昭和四十二年・平成十二年 卓球レポート編集部]
意気盛んな荻村の濃密な理論が展開。まさに卓球理論書の金字塔
「卓球史上最高の理論書」これが本書の二〇〇二年増補改定版に冠せられた言葉である。本書はその言葉どおりの名著であり、卓球理論書の金字塔である。
この本の噂はいろいろなところで見聞きしていたが、かなり前に絶版になっていたとあって、まさに幻の名著であった。卓球本探しに訪れた卓球専門店でこの本を差し出された時の興奮は、今でも忘れられない。
さっそく本書を読み返したが、大変なことになった。見どころに貼る付箋(ふせん)が多くなりすぎて、付箋の意味をなさない。なにしろ当時三十五歳で意気盛んな荻村が、日本卓球協会の上層部と意見が合わず理事を辞任した後、エネルギーを集中して書き下ろしたのが本書なのである。その密度の濃いことと言ったら他の著作とは比較にならない。
本書は第一章で「戦術について」と題して卓球の戦術についての一般論が述べられ、第二章で卓球史に残る世界の名選手三十一人の戦術と技術の解説がされている。