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[プレイバック2021東京五輪]DAY12/8月5日・「本気」で優勝を狙い、中国を「本気」にさせた日本 

別冊卓球王国「東京五輪特集号」掲載

東京五輪 卓球競技
2021年7月24日~8月6日[東京体育館]

Coverage by
柳澤太朗Taro Yanagisawa

写真=柳澤太朗、レミー・グロス
photographs by Taro Yanagisawa & Remy Gros

日本女子の3人は決勝のコートに立っただけで、満足する選手たちではなかった。彼女たちは新たな歴史を作ろうと中国の厚い壁に立ち向かった。最後の1本まであきらめない、その戦いぶりに誰もが感動した。

ダブルスで好発進するも、牙城崩せず。日本、中国の壁破れず。しかし堂々の銀

<女子団体決勝>
  中国 3-0 日本
◯陳夢/王曼昱 -9、6、8、7 石川佳純/平野美宇 
◯孫穎莎 8、5、-3、3 伊藤美誠 
◯王曼昱 5、9、3   平野美宇 

決勝トップのダブルス、日本の石川と平野のダブルスは競り負けたが、素晴らしい気迫と思い切りの良いプレーを見せた 
シングルスに続き団体戦でも孫穎莎に敗れた伊藤。「中国選手に勝ちたいという気持ちは変わらない。その目標を現実にしていきたい」(伊藤)

伊藤美誠、孫穎莎にリベンジならず。「中国選手に勝ちたいという気持ちは変わらない」

  ついに日本対中国の決戦の時が来た。石川佳純と平野美宇のダブルスで、何とか先制点を奪いたい日本。

  日本ペアは出足から石川の鬼気迫る闘志と、平野の強打が決まる。「行けるぞ、日本!」。11-9で1ゲームを先取。1-1になったあとの3ゲーム目は一進一退、8-8から中国ペアが3点連取で、ゲームを連取。4ゲーム目、攻めの姿勢を貫いて好プレーを見せた日本ペアだが、1-3で中国の陳夢/王曼昱に敗れた。

 2番は伊藤美誠と孫穎莎。1ゲーム目、伊藤が8-6とリードしたが、孫穎莎が回り込みフォアドライブを連発し、5点連取。2ゲーム目も5-5から6点連取で孫穎莎が奪う。伊藤は3ゲーム目を奪ったが、4ゲーム目はアンラッキーなポイントもあり、孫穎莎が11-3で勝利した。 

  3番の平野は両サイドの厳しいコースを突くも、王曼昱が長身を活かして回転量のあるドライブで得点を重ねて対抗。2ゲーム目、9-8から王曼昱に3点連取される。3ゲーム目も王曼昱に攻め込まれて試合が進み、最後は平野のフォアドライブがオーバーしてゲームセット。中国が女子団体4連覇を決めた。

  試合後、日本は3選手とも目に涙を浮かべながらインタビューに答えた。会見での言葉を紹介しよう。

  「シングルスでは相手に流れを持っていかれたり、自分らしいプレーを出すことができなかったけど、団体ではシングルスの時よりも楽しく試合ができて良かった」「中国選手以外には負けなかったのは自信になるし、3種目でメダルを獲れたことはうれしいけど、私自身は悔しい気持ちのほうが強い。勝って終わりたかった」(伊藤)

 「リオからの5年間は苦しい時もあって、いろんな方に支えてもらった」「最近の3年間くらいは正直卓球があまり好きじゃなくて、東京(五輪)が終わったらやりたくないと思っていたけど、今回はこうして戦えてすごく楽しくて、まだまだ卓球をやりたいと思える。卓球を続けてきて良かった」(平野) 

 「リオが終わって東京までの5年間で、出場権が決まってから、1番のダブルスを決勝では絶対とるという気持ちで練習してきた。5年前と意識は違うし、自分自身への期待も(ロンドン五輪時の)2012年とは大きく変わった」 「今日の結果は残念だったけど、こうして10年間トップレベルで続けてこられた。今日は自分をほめてあげてもいいのかなと思ったりもします。サポートしてくれた人に感謝したいし、こうして2012年の時よりも成長できていて、頑張り続けてこられたことがすごくうれしい」「本当に心強い2人で、チームワークもすごく良かった。オリンピック前の合宿から最高の雰囲気でできて、本当に2人には感謝しかない」(石川)

  敗れたが、日本の頑張りと王者に立ち向かう姿は「感動」という言葉がふさわしい。ありがとう! ニッポン女子!!

平野のプレーは素晴らしかった。「小さい頃からずっと目指していたオリンピックに出場することができてすごく幸せで、うれしかった」(平野)
試合後の日本チーム。支え合い、自分の責任を果たそうとした。そして、お互いへのリスペクトと感謝があった

初出場トリオでも隙なし無失点で完走。中国強し

 中国は日本に出発する前からベテランの劉詩雯は混合ダブルスのみで、王曼昱が団体戦のために準備していたという情報もある。故障・病気以外では使えないPカード(リザーブ)制度を巧みに使ったとも言えるし、石橋を叩いて渡るほどに、日本を警戒していたとも言える。

  3人が五輪初出場の中国だったが、そんな不安はこのチームには無関係だった。中国はおそらく「対日本」だけに訓練を集中させたのだろう。

 日本は100%、いや120%に近いパフォーマンスを見せていた。それでも中国の厚い壁の縁に手をかけることができなかった。

  陳夢、孫穎莎、王曼昱の卓球の完成度。コロナ感染拡大以降、北京に戻らず、国内各地で集合訓練を重ねた中国は、最後まで五輪代表の切符をかけて競わせ、さらなる高みにレベルを引き上げた。「数年かけて、ゲームプラン、戦略、戦術すべてを網羅して準備してきた。密度の高い練習の成果でもある」(陳夢)。

  高くそびえ立つ中国。しかし、挑みがいのある、征服すべき山とも言える。

大会前はリザーブ登録だった王曼昱は日本との決勝では単複2点取りの活躍を見せた
3番で平野が王曼昱に敗れ、中国の4連覇が決まった。日本チームはやはり史上最強だった。それでもまだ届かない中国の強さ。 「中国との差は縮まった部分もあるけれど、結果からするとまだ縮まっていない。技術は追いついてきたけど、戦術対応能力では中国が上だった」(馬場美香監督) 

香港女子、初メダル劇的! 蘇慧音がドイツから2得点

<女子団体銅メダル決定戦>
  香港 3-1 ドイツ
 李皓晴/杜凱琹 8、-5、-7、-13 シャン・シャオナ/P.ゾルヤ◯
◯蘇慧音 10、-9、9、7 ハン・イン 
◯杜凱琹 5、6、9 P.ゾルヤ 
◯蘇慧音 10、11、7 シャン・シャオナ 

杜凱琹(左)をダブルスで起用するという奇襲作戦に出た香港。ダブルスは期待に応えられなかったが、善戦して2番につないだ
ドイツ戦で帰化選手二人を撃破して、香港に初のメダルをもたらした蘇慧音(スー・ワイヤム)
2番で蘇慧琹に敗れたハン・イン。1ゲーム目6ー10から逆転で落としたのが痛かった
五輪4連覇を達成した中国
2012年ロンドン五輪以来の銀メダルを獲得した日本女子
銅メダルを獲得した香港