[ワルドナー伝説]vol.1 卓球王のプロローグ
書籍『ワルドナー伝説』vol.1
『100年にひとりの天才』と称された、ワルドナー(スウェーデン)の半生に迫った書籍『ワルドナー伝説』(卓球王国刊・絶版)。人気を博した1冊を卓球王国PLUSでプレイバック
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まえがき
「When the feeling decides ― J-O Waldner」(邦題『ワルドナー伝説』)とタイトルを付けたこの本は、スウェーデンでは1997年の秋に出版されたものだ。
すでに本書はスウェーデン語、ドイツ語、英語、そして中国語に訳されている。発刊以後も、ワルドナーは2000年のクアラルンプールでは世界選手権の団体優勝を果たし、同年のシドニー五輪では銀メダルに輝き、2002年ヨーロッパ選手権では団体優勝に貢献した。中国の人たちは彼をThe Evergreen(常緑樹)と呼ぶことを好む。長い間、常に世界のトップとして君臨しているからだ。
2002年、ストックホルムのレストランで転んで、足を骨折した時、彼は世界ランキング7位に位置していた。82年のブダペストで開かれたヨーロッパ選手権、世界が注目する舞台でデビューして以来、20年が過ぎている。現在、38歳という年齢になったが、今でも次の五輪と世界選手権に彼はシフトアップしているのだ。
結果として、日本語版では最新の「When the feeling decides ─ J-O Waldner」を作り上げることになり、それは私にとって違った意味での喜びとなった。
ワルドナー自身、日本に滞在すること、日本でプレーすることをとても気に入っているし、日本の卓球ファンに感謝の念を抱いている。そのファンの手元に本書が届くことを、彼はとても喜んでいる。
英語版では97年のマンチェスター大会を含めた新たな原稿が追加された。その大会では、ワルドナーは全試合ストレート勝ちという離れ業を演じ、イギリスの卓球ファンをしびれさせた。本書のオリジナルのスウェーデン語版が出てからも、「ワルドナー伝説」は続いているのだ。
私はこの日本語版の『ワルドナー伝説』の発刊にあたって、本書の訳者であり、長年の私の友人であり、世界でベストの卓球雑誌「卓球王国」編集長の今野昇氏に、心から感謝の意を表したい。
彼は懸命に、そして忍耐強く、私の英語の原稿から日本語への翻訳を務めてくれた。彼の発刊への情熱と卓球への理解なしにはこの日本語版は決して出版することはできなかった。
そして本書を日本にいるヤン-オベ・ワルドナーのファンに贈りたい。
2003年10月
イエンス・フェリッカ
第1章 キング・オブ・テーブルテニス
The King of Table Tennis
1 卓球王のプロローグ
■ 世界のトップランナーとして走り続ける、ワルドナーという男
ヤン-オベ・ワルドナーは「The King of Table Tennis」である。
16歳の時、82年のヨーロッパ選手権で決勝に進んで以来、2000年のシドニー五輪まで世界のトップランナーとして走り続けている。2004年に39歳を迎えるこのスウェーデン選手は、世界の卓球界で、そのユニークなプレースタイルと無限の能力を誇っている。そして、勝利への衰えることのない貪欲なスピリットは驚異の一語に尽きる。