呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
「ぼくが勝っていたら……。2人は責任を感じる必要はない」常に完調なエースなんていないはずだ
卓球王国2024年10月号別冊『パリ五輪 卓球特集号』掲載
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稲垣康介(朝日新聞編集委員)INAGAKI Kosuke
銀メダリストは涙に暮れ、銅メダリストは笑顔で表彰台に立てる。
五輪ではそんな言い回しがある。対戦形式の競技の場合、決勝で敗れ、あと一歩で頂点を逃した敗者の銀メダルと、1度負けたところから気持ちをリセットし、3位決定戦で勝って手にする銅メダルとの違いだ。
パリ五輪での卓球男子団体で、日本は「勝てばメダル確定」のチャンスを2度逃した。
8月7日、パリ南アリーナ4に流れる空気は、途中から急変した。日本はスウェーデンとの準決勝で最初の2試合を取りながら、ラスト5番の勝負にもつれた。張本はシェルベリから最初の2ゲームを奪ったが、会場はスウェーデンの反攻を再び期待する空気に包まれ始める。鉄骨を組んだ仮設席の床を踏みならす大音量。ゲームカウント2−2。現地時間は午後11時20分を回った。
最終第5ゲーム、張本は9−8までこぎつけた。シェルベリはベンチにいたパーソン監督の助言を胸に刻んだ。