呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
真説 卓球おもしろ物語5【ハンガリー黄金時代と卓球の危機 ~金メダル22個の”ミスター・テーブルテニス”ビクター・バルナ】
〈その5〉卓球王国2020年11月号掲載
Text by
伊藤条太Jota Ito
『マンガで読む卓球ものがたり』の原作を担当する伊藤条太氏が、史実の背景にある「おもしろ秘話」も交えて、卓球の歴史をご案内。今回は初期の世界選手権を襲った、今では考えられないような出来事を紹介する。
●参考文献:『TABLE TENNIS COLLECTOR』ITTF 「ピンポン外交の陰にいたスパイ」ニコラス・グリフィン/五十嵐加奈子訳
金メダル22個の”ミスター・テーブル・テニス” ビクター・バルナ
1926年に世界選手権が始まってから1935年までの10年間は、ハンガリーの黄金時代である。この10年間に延べ55種目が行われたが、そのうちの47種目でハンガリーが金メダルを獲得している。実に85%という凄(すご)さだ。
その中でも、とびっきりのスーパースターがビクター・バルナだ。獲得した金メダルの数は、男子団体7個、男子シングルス5個、男子ダブルス8個、混合ダブルス2個で、合計22個という断トツの世界記録で“ミスター・テーブルテニス”と言われた。
男子シングルスで5回も世界チャンピオンなど「いい加減にしろ」とでも言いたくなる回数だ。当時は世界選手権の各種目が毎年開催されていたのでこんな記録が可能だったのだが、1959年から隔年開催になったので、この記録を破ることはほぼ不可能となった(12年間にわたって全種目に優勝する必要がある)。
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