呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
[ワルドナー伝説]vol.7 ワルドナー、12歳のデビュー
『100年にひとりの天才』と称された、ワルドナー(スウェーデン)の半生に迫った書籍『ワルドナー伝説』(卓球王国刊・絶版)。人気を博した1冊を卓球王国PLUSでプレイバック
Text by
イエンス・フェリッカJens Fellke
Translation by
今野昇Noboru Konno
Cover Photo by
高橋和幸Kazuyuki Takahashi
第2章 達人への道
From Mascot to Master
3 ワルドナー、12歳のデビュー
■ 9歳にしてアンチラバーの特性を見抜いた、ワルドナーの大人びた理解
卓球を始めた頃から、ヤン-オベ・ワルドナーの卓球に対する理解というのは、彼自身の年齢よりもずっと大人びたものだった。
ワルドナー兄弟にとって、ストックホルムの11、12歳の大会で勝つためには、ひとりの倒すべき相手がいた。彼の名前はシェル・パーソン。グリーンのシャツと黒のパンツをはき、ストックホルムの西地区に住んでいた選手だ。彼のラケットはいわゆる異質ラバーラケットで、片面には通常の回転のかかる裏ソフト、もう片面にはアンチトップスピンラバーという回転のかからないラバーを貼っていた。
アンチラバーで打ったボールはゆっくりと、まるで空気中を漂うように飛んできて、ほとんどの場合、回転がかかっていない。ところが、たまにカットボールのように下回転がかかって返ってくることもある。ワルドナー兄弟はシェル・パーソンについて話し合ったが、兄のシェル-オッケは試合でシェル・パーソンと当たるたびに負けていた。うまくアンチラバーのボールを返せないためだ。