呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
[卓球本悦楽主義21] 突き抜けた美しさを持つ技術。四半世紀も読まれた名著
〈卓球専門書の愉しい読み方21〉卓球王国2005年9月号掲載
Text by
伊藤条太Jota Ito
『この人のこの技術』
■ 卓球レポート編集部[昭和五〇年 (株)タマス] ※現在は絶版
突き抜けた美しさを持つ技術。四半世紀も読まれた名著
69年から卓球レポートで連載された同名の企画をまとめたもので、60年代後半から70年代前半の選手28人の技術が連続写真で紹介されている。時代の淘汰(とうた)を受けやすい技術書であるにもかかわらず、2003年に廃版になるまで、四半世紀も発売され続けていた名著中の名著である。
なんといっても表紙が素晴らしい。「それぞれの一流選手のもっとも得意とする最高の技術だけを選んで写真で紹介する」という本書のコンセプトが完全に表現されている。なおかつ、粒子の粗いモノクロ写真に真紅の帯というシンプルなデザインが、まるでアウシュビッツ収容所の写真集のような異様な迫力をかもし出している。
そしてなによりも決定的なのが伊藤繁雄(69年世界チャンピオン)のフォアハンドドライブのフォームである。2kmのウサギ跳びで鍛えた大腿筋、肩関節の可動範囲の限界まで振りきった右腕、指先まで神経が行き届いたラケットハンド、力強くはり出されたフリーハンド、胸には名門専修大学の重い「S」マーク。伊藤繁雄の想像を絶する鍛錬がこの写真にみごとに表現されている。