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【People】佐藤哲也:大会誘致に運営、そして更生保護。地元だからこそできることがある

[(一社)福岡県卓球協会理事長]

卓球王国2024年10月号掲載

[さとう・てつや]

1962年8月24日生まれ、福岡県出身。穴生(あのう)中で卓球をはじめ、八幡高、福岡教育大でも卓球部に所属。大学卒業後は教員となり、卓球部顧問として3校で生徒を指導し、全国大会出場選手を多数輩出。26歳から福岡県卓球協会に入り、22年に県卓球協会理事長に就任。また子どもたちの更生保護にも携わり、現在に至る

Text by
永尾 垣En Nagao

 2018年、福岡県北九州市で開催されたジャパンオープン。男女シングルスの決勝が行われた大会最終日の会場はほぼ満員。行政、運営スタッフと連携しながら大会の成功を陰で支えた人物こそ、福岡県卓球協会の理事長を務める佐藤哲也だ。

 「生まれも育ちも北九州市」。そう話す佐藤が卓球と出合ったのは中学1年の頃。「本当は野球部に入りたかったけど、坊主になるのは嫌だった」。そんな時にかわいい先輩に声をかけられ、躊躇なく入部したのが卓球部だった。その後も高校、大学と卓球を続け、福岡教育大時にはインカレへの出場も果たした。

 大学卒業後は中学校の教員となり、卓球部顧問として生徒を指導。全中や全日本カデットなど、全国大会出場選手を多数輩出し、当時、近藤欽司氏(元全日本女子NT監督)の率いた名門・白鵬女子高にも生徒を送った。

 協会の仕事に携わるようになったのは26歳の時。「よく練習に行っていた」という大学の卓球部監督だった松本茂利氏の誘いを受けたのがきっかけだった。

 その後も卓球部顧問として指導を続けたが、「指導は若い人でもできるけど、ぼくらじゃないとできないことがある」と、徐々に部活動の指導から撤退。2022年には福岡県卓球協会の理事長に就任し、現在は小学校の校長を務める傍ら大会の誘致、運営など、協会の活動に積極的に取り組んでいる。

 今年の11月には「WTT男女ファイナルズ」が北九州市で開催されるが、大会誘致に尽力したのは佐藤だった。

 「今までいろんな大会をやってきたので大会運営の経験値がある。ジャパンオープンの時には北九州市の市役所の人も手伝いに来てくれた。大きな大会は簡単には誘致できない。たとえ誘致に成功しても、それを運営する人間(=スタッフ)がいなければ大会は成り立たない。その人間も育てなければ、良い仕事はできない」

 佐藤は大会誘致における自分の強みをこう語る。「やっぱりずっと北九州市にいたし、教育委員会にもいた。ずっと行政の人とやり取りしているので『強いつながり』がある」。

 そして今、佐藤が最も力を入れているのが2028年に行われる世界選手権の北九州開催だ。大会誘致のため、今年2月の世界選手権釜山大会、8月のパリ五輪へとPR活動に東奔西走。そんなバイタリティ溢れる佐藤を突き動かすのは、「自身の卓球への未練」と「卓球をさらにメジャーにしたい」という熱意だという。 「ちょうど卓球の暗黒時代とよばれた頃に中学、高校、大学と卓球をやっていましたが、たいした選手になれなかった。悔しかった。だからこうしてずっと卓球に携わっているのかもしれない」

 また、佐藤にはもうひとつ別の顔がある。それは犯罪や非行をした人の立ち直りを支える民間ボランティアだ。殺人事件の容疑者を親に持つ子どもの未成年後見人にもなるなど、卓球以外の場所でも地域に貢献している。

 地元だからこそ、できることがある。佐藤はこれからも、教育者として培った知見と持ち前のバイタリティで、北九州市を盛り上げていく。  (文中敬称略)