【伝説のプレイヤーたち】小和田敏子 前編　「卓球が面白くて、面白くてしょうがなかったです。練習がものすごく楽しかった」

The Legends　第20回　小和田敏子（1969年世界選手権女子シングルス優勝／卓球王国2019年1月号掲載）

相手を見据える眼光の鋭さは、さながら女武者の迫力。
小和田敏子は東北人の粘り強さと、
勝負にかける執念を持ち合わせた卓球の鬼だった。
卓越したセルフコーチングの能力で
世界の頂点への道のりを一歩一歩、力強く歩んでいった。

■Profile　こわだ・としこ
1947（昭和22）年11月17日生まれ、山形県出身。谷地中・谷地高を経て中京大に進学し、大学3年時のアジア選手権で国際大会にデビュー。69年世界選手権ミュンヘン大会で初出場・初優勝を飾り、71年名古屋大会では女子団体の2大会ぶりの優勝に大きく貢献した。国内大会でも68・69年度全日本選手権2連覇、68・69年全日本学生選手権2連覇など数多くのタイトルを獲得している。右ペンホルダードライブ型

台の後ろでボール拾いをする時はいつも強い選手の後ろで
じっと観戦していました

　「先生、ぼく今日はちょっと調子悪いんですよ」

　小和田（現姓：竹内）敏子は、卓球で負かした学生から、悔しそうにそう言われることがあるという。

　中京大の名誉教授である現在でも、毎週木曜日に3コマの授業を受け持つ小和田。実技の時間にはラケットを握ることもあるが、自己紹介でも元世界チャンピオンだと明かすことはない。それでも、勘の良い誰かがインターネットで調べて、優しい「竹内先生」の正体はやがて知れ渡ってしまう。

　「自分の経歴とか、肩書きを自分の口から言うのは、ひけらかすようで嫌なんです」

　チャンピオンにありがちな激しい気性や自己主張とは対極にある、落ち着いて温かみのある小和田の語り口。しかし、69年世界選手権ミュンヘン大会で小和田が初優勝を飾った時、ベンチに入った日本女子チームの藤井弘三監督は『卓球レポート』誌上にこんなコメントを残している。