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ちょいデカラケット時代がやってくる!?【前編】

卓球メーカーのカタログのラケットページを見ると、どのブランドもシェーク攻撃型用のラケットが多く作られているのがわかる。これはトップ選手から愛好者までの幅広いレベルで、シェーク攻撃型の選手が圧倒的に多いためだ。
そのシェーク攻撃型ラケットのブレードサイズにちょっとした変化が見られている。若手トップ選手を中心に、ブレードを大きくした「ちょいデカラケット」を使う選手が増えている。
この特集では各社の「ちょいデカラケット」を選び、その性能を紹介する。

ちょいデカラケットブームの深イイ話①

昨今のちょいデカラケットの火つけ役は張本智和&バタフライ
 ここ数年のシェーク攻撃型ラケットのひとつのブームとして、ブレード面をサイズアップさせた「ちょいデカラケット」が発売されるようになってきている。このちょいデカラケットの火つけ役を探ると、張本智和とバタフライにたどり着くことができる。
 2015年にスタートしたバタフライと張本智和による「張本ラケットプロジェクト」。約3年にわたって研究、開発、試打されたラケットは30種類を超え、張本はそれまで使っていた『インナーフォースレイヤー ALC』をベースにしたグリップ特注ラケットから、ブレードを縦1ミリ、幅2ミリほどサイズアップさせたラケットを選び、すぐに使用を開始した。
 そのラケットは『張本智和 インナーフォースALC』として、2019年4月1日にバタフライから発売される。わずか数ミリの差だが、見た目でもわかる大きめのブレードサイズが話題に。そして、ブレードをわずかに大きくしたことでボールをつかむ感覚がより向上し、性能面でも高い評価を受けた。ブレードが大きく設計されたシェーク攻撃型ラケットは、張本が使用する前から各ブランドにラインナップされていたが、張本が使用したことでより広く認知されたと言っていい。
 その後にスティガが開発した多角形ブレードの『サイバーシェイプ カーボン』もブレードサイズが大きく設計されており、そのラケットを使ったモーレゴード(スウェーデン)が2021年に世界2位になってブレイク。また、早田ひながニッタクと共同開発した『Hina Hayata H2』もブレード面が大きい。パリ五輪で2つの銅メダルを獲得したF.ルブラン(フランス)は中国式ペンだが、そのラケットと同じ合板構成のシェークラケット『フェリックス・ルブラン ハイパーカーボン』もブレードサイズを大きくするなど、世界のトップ選手たちが「ちょいデカラケット」を好む傾向が現れてきている。
日本男子のエース、張本智和がブレード面をわずかに大きくしたラケットを使用したことが話題になった

「ブレード面が大きくても重くて振りづらいことはなく、
守備力が上がり、その延長線上で攻撃力も出る(張本智和)

 「ラケットのブレード面が少し大きくなっても重くて振りづらいとか、スイングスピードが遅くなることなく、シンプルに使いやすいと感じています。
 大きくなったといっても1、2ミリなので、それまで届かなかったボールが取れるようになったりはしないのですが、スイートエリアが広くなったことで、ボールをとらえる場所が少し外れてしまっても、ただ入るのではなくて『芯でとらえたボール』になって飛んでいきます。そして、特に良くなったのはブロックの安定感が増したこと。ドライブなど自分が攻撃する時は狙って打つので、真ん中辺りでボールを捉えることができますが、ブロックはとっさに打たれたボールに手を出すことがあります。ブレードが大きくなってからは、極端に言えば端の方に当たってもちゃんと入ってくれます。ぼくはもともと数グラムの重さにはそれほどシビアではないのですが、両面にラバーを貼っても特に重いと感じることはなくて、守備力が上がった延長線上で攻撃力も出ます。ぼくにとって理想のラケットですね」(張本)
ブレード面が大きくなったことで「ブロック安定性が増した」と張本は言う

ちょいデカラケットブームの深イイ話②

若手のトップを中心に国内外で
「ちょいデカラケット」 を使う選手が増えている
 現在のシェーク攻撃型ラケットの標準的なブレードサイズを縦157ミリ、横150ミリと定義した場合、トップ選手でそれよりもブレードサイズが大きいラケットを使っている選手は、比較的若い選手が多い傾向にある。
 「ちょいデカラケット」を牽引している張本智和は21歳で、妹で16歳の張本美和は兄と同じ『張本智和 インナーフォース SUPER ALC』(バタフライ)を使用。
 また、多角形のブレードでサイズアップされた『サイバーシェイプ カーボン』(スティガ)は、モーレゴード(スウェーデン)が使用し、2021年世界選手権で準優勝。当時のモーレゴードは19歳で、現在は22歳とまだまだ若い。
 パリ五輪で銀メダルと銅メダルを手にした早田ひなが使う『Hina Hayata H2』(ニッタク)もブレードが縦158ミリ、横152ミリと大きく、早田が22歳時の2022年7月に発売されたが、ベースになるラケットはそれよりも前から使っている。
 中国では世界ランキング1位の王楚欽が使う『キョウヒョウ王』(紅双喜/ニッタク)は縦158ミリ、横150ミリで縦が1ミリほど大きい。女子1位の孫穎莎が使用する『キョウヒョウ颯』(紅双喜/ニッタク)も縦158ミリで横150ミリ。中国では馬龍が使う『キョウヒョウ 龍5』(紅双喜/ニッタク)も同サイズであるが、以前から縦158ミリのブレードが好まれている。
早田ひなは『Hina Hayata H2』を使用する(写真はプロトタイプモデルを使用時のもの)
中国選手は縦を1ミリほど大きくしたラケットを使い傾向があり、王楚欽が使う『キョウヒョウ王』もブレード面の縦のサイズが158ミリだ
張本美和は兄と同じ『張本智和 インナーフォース SUPER ALC』を使用

この特集で取り上げる主要ブランドの「ちょいデカラケット」 8選

 この特集では上の8ブランドから原則として1本の「ちょいデカラケット」を選び、次ページから詳しく紹介していく。
 上の表はそれぞれのラケットのブレードサイズ(縦と横)、グリップサイズ、板厚になる。ブレードの縦サイズは8本中7本が158mmで、『リゾネイト AI』(ヤサカ)だけが157mm。標準的な縦サイズが156〜157mmのため、ちょいデカラケットと言っても縦の大きさは1mmだけ大きくしていることになる。
 一方で、横(幅)については標準的なサイズの150mmに対して、1mmアップが3本、2mmアップが4本とサイズアップのバリエーションがある。また、多角形のブレードで、丸みのある他ブレードとは一線を画す『サイバーシェイプ カーボン CWT トルルス エディション』の横は156mm(最大値)とかなり広く作られている。
 今回の特集では取り上げないが、グリップの長さはおおむね100mmになっており、これは標準的なブレードサイズのラケットと同じ。板厚については、弾みや重量に大きく関係してくるので、各ラケットで厚さが違っているのがわかる。