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活字の中の荻村伊智朗「卓球理論で人の心は動かせない。表現者だったからこそ人を動かすことができたのだ」

 荻村伊智朗没後30年 卓球王国2015年3月号掲載 <伊藤条太(卓球コラムニスト)>

「日本にはオギムラがいた」

若かりし日、現役時代の荻村伊智朗。選手の時から卓球専門誌で連載を持ち、書籍刊行。38歳で「卓球ジャーナル」という専門誌の発行人、兼執筆者として文才を発揮していた

Text by

伊藤条太Jota Ito

私は荻村の文章を読み漁るようになり、ときには笑い、ときには感動で鳥肌を立て、ついには息子にその名を戴くまでになったのである

 スウェーデンの卓球ジャーナリスト、クリスチャン・ヘイドールは、自分の息子のファーストネームとミドルネームを「イチロー・ステラン」としたという。かくいう私も息子に「伊智朗」と名付けてある。名字と名前の一文字目が同じなので本人は書くときによく間違えるらしいが、構うものか。そうまでしてこの名前をつけたかったという私の思いの過剰さが表現できて、この名字でかえってよかったと思うくらいだ。それくらい荻村伊智朗とは私にとって別格の存在なのである。

 とはいっても、私は荻村のプレーをリアルタイムで見たわけではないし、もちろん会ったこともない。荻村伊智朗との接点は本や雑誌の文章だけである。

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