ロゴ画像
卓球王国PLUS > 読み物+ > 真説 卓球おもしろ物語23【中国伝統・表ソフト前陣速攻神話の崩壊】
記事見出し画像

真説 卓球おもしろ物語23【中国伝統・表ソフト前陣速攻神話の崩壊】

〈その23〉卓球王国2022年5月号掲載

Text by

伊藤条太Jota Ito

卓球史研究家・卓球コラムニストの伊藤条太氏が、独自の視点で卓球史を紹介するこのコーナー。
今回は、80年代後半から90年代にかけての物語。表ソフト前陣速攻が世界を席巻していた85年大会以降、スウェーデン卓球、韓国卓球の躍進、そして「スピードグルー」の登場によるプレースタイルの勢力図の変化。ペンからシェーク全盛時代へと時代が変わっていく。

参考文献:『TSPトピックス』1987年5月号、「ワルドナー伝説」イエンス・フェリッカ、『卓球レポート』1986年12月号、『卓球王国』2002年6月号

1985年世界選手権、栄華を極める表ソフト前陣速攻

 1985年世界選手権イエテボリ大会(スウェーデン)の男子シングルス決勝は、江加良(コウ・カリョウ)と陳竜燦(チン・リュウサン)によって争われた。二人とも中国伝統のペンホルダー表ソフトによる前陣速攻型だった。台にぴったりと張りつき、バックハンドのショート(現在のブロック)で相手を振り回して先手を取り、フォアハンドで止(とど)めを刺す、いわゆる“右打ち左押し”スタイルだ。
 この二人の活躍は“ペン表こそが理想の卓球”と思わせた。世界選手権の決勝を争ったという事実もさることながら、速いテンポで相手を翻弄(ほんろう)し、まったく卓球をさせないプレーが強さを際立たせた。更に、フォア面が表ソフトのシェークハンドの滕義(トウ・ギ/中国)が男子シングルスで3位に入り、まさにこれからの卓球は表ソフトという印象を与えた。男子団体でも中国は江加良、陳龍燦にカットマンの陳新華(チン・シンカ)を加えた布陣で、決勝でスウェーデンを5─0で破って優勝した。5─1だった前大会以上の圧勝だった。
 このように、中国が表ソフト前陣速攻で卓球界を支配していたのに対して、日本代表選手は依然として裏ソフトドライブ型が主流だったため、それが中国に勝てない原因かのように見えた。

卓球王国PLUS有料会員になると続きをお読みいただけます

卓球王国PLUS有料会員は月額440円/税込。
登録すると「卓球王国PLUS」の記事をすべて閲覧できます。
退会はいつでも簡単にできます。