【アーカイブ】水谷隼&石川佳純の対談 vol.5(最終回)「勝った時と負けた時って、どっちが次につながる?」(水谷)
卓球王国2015年6月号掲載
写真=江藤義典&奈良武 photographs by Yoshinori Eto & Takeshi Nara
ヘア&メイク=Reina hair & make by Reina
2015年1月の全日本選手権大会を連覇で飾り、7度目の優勝を果たした水谷隼と3度目の優勝を果たした石川佳純。ともに世界ランキング5位と堂々のトップランカー。王者としての自信とプライド、チャンピオンがゆえに抱える悩みをお互いに語り合った。
interview by
話をしていると、負けず嫌いとか勝利への執念とか、すごさを感じます。練習量はメチャクチャ多い(水谷)
4月上旬、都内の撮影スタジオにヨーロッパ遠征から帰国し、「時差ボケなんです〜」と言いながら、天真爛漫な笑顔を見せ現れた石川佳純。チャンピオン対談にテンションは上がっていったが、清廉な雰囲気は相変わらずだ。一方、どこかはにかみながらも対談を楽しみにしていた水谷は、質問をさらりとかわしつつも本音をぽつりと吐き出す。
向上心の塊の石川と、達観しつつハングリーな水谷の掛け合いは興味深いものだった。
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●ー対談をして、改めて水谷選手から見た石川選手は?
水谷 向上心がすごいですよね。卓球においては。技術でも戦術でも何でも柔軟に対応できるところが、他の女子の選手とは大きく違うところかもしれないです。引き出しも多いし、勝負所での思い切りの良さもある。
話をしていると、負けず嫌いとか勝利への執念とか、すごさを感じます。練習量はメチャクチャ多い。できる限り、ぼくも練習はやっていきたいと思う。プライベートコーチがいると自分の好きな時間に好きなようにできるけど、ぼくの場合はお願いして練習をしている立場だから、自分の練習ができない。あくまで、そこのルールに則った練習しかできない。プライベートコーチがいて自分専用の練習場があったらぼくも毎日6時間は練習できる。
●ー石川選手から見た水谷選手は?
石川 分析するのは難しいけど、参考にする部分は多い。同じ左利きだから、コース取りとか、自信を持った戦いぶりは参考になります。
●ー水谷選手と練習したことはありますか?
石川 去年一度だけ練習したけど緊張しましたね。ボールは重いし、ミスする要素がない。合宿とかで練習を見たり、ゲーム練習を見たりするのも勉強になりました。
水谷君はどうやってモチベーションを保ち続けるのか? ないように見えて絶対ある。なかったらあのポジションにはいられない。でも、本音で答えてくれないからな(笑)。どうすれば私はもっと強くなれるのか、もっとレベルアップできるのかを聞きたい。まじめに答えてほしいですね。
●ー強くなるために石川選手自身が考えるポイントは?
石川 メンタルかな。まずは自分より強い選手に勝つ決意を持つこと。そこで初めて意識がついてきて練習ももっと頑張れる。試合の中で勝てそうになっても、勝つ決意がないと絶対勝てないとずっと思っています。
●ーランキングが上がっていけばいくほど、技術だけでなく、「最後のここで1本ほしい」という時にはメンタルが左右するということですね。
石川 絶対そうです。1本ほしいのは私だけでなく、相手だってほしい。そこで点を取る、勝つためにはメンタルが重要です。いくら技術があっても、それを使うメンタルがなかったら何もできない。最後はメンタルだと私は思っています。
勝つに越したことはないけど、負けた時、その敗戦を次にどう生かすかが重要だと思う。負けっ放しは一番ダメ。反省もしない、練習方法を考えないのは一番ダメ。勝つのが一番だけど、負けても悪いことだけではない。
もちろん、勝てば勝つほどやる気は湧いてきます。今やっていることが正しいんだと思える。負けた時には何がダメで何が良かったかを反省するようにしています。世界の舞台では同じ相手と何度も戦うから。
●ー水谷選手、石川選手がさらに上に上がるためには何が必要でしょう。
水谷 あと2倍の練習をする。
石川 ほら、まじめに答えてくれないでしょ(笑)。