[パリでのラストダンス] Part3「ぼくがこの金メダルに認めた意義は『自分に打ち克った』ということなんだ」(樊振東)
卓球王国2025年3月号掲載
記事提供=『世界』text by Table Tennis World
インタビュー=陳思婧 interview by Chen Sijing
文・翻訳=柳澤太朗 text & translation by Taro Yanagisawa
写真=レミー・グロス、浅野敬純 photographs by Rémy Gros & Takazumi Asano
「金メダルやタイトルの意義というものは自分自身で決めるものだと思う。自分が特別なものだと思えば、それは唯一無二のものになる」(樊振東)
パリ五輪では準々決勝の張本戦を乗り切り、決勝でモーレゴードを破って初優勝を決めた樊振東。
決勝の5ゲーム目は10−3で「ゴールドメダルポイント」を握りながら、10−8まで追い上げられてヒヤリとしたが、最後まで冷静にプレーを続けた。その決勝の舞台で、彼は不思議な感覚にとらわれた。
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●─決勝で勝利して、パリ五輪の男子シングルスのチャンピオンになり、「伸び伸びとプレーする」という試合前の目標は達成できたと思いますか?
樊振東(以下・樊) また異なる感情、異なる感覚に変わったかもしれないね。最も複雑な感情を抱いたのは決勝の5ゲーム目。10-3から10-8まで追い上げられた。その間、ぼくはうれしくもあり、緊張もあり、焦りもあり、さまざまな感情にとらわれていた。早く勝ちたいけれど、この試合をもっと続けていきたいという思いもあった。
ずっと激しい競り合いが続いて、最後に勝つことができれば開放感があるし、大きくリードした時には事前に喜びにひたることができる。実際の優勝の瞬間はむしろシンプルで、ただその瞬間を楽しむだけだった。