真説 卓球おもしろ物語30【日本の復活を支えた帰化選手たちと新サービスの発明】
〈その30〉卓球王国2022年12月号掲載
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卓球史研究家・卓球コラムニストの伊藤条太氏が、独自の視点で卓球史を紹介するこのコーナー。今回は、2006年世界選手権ブレーメン大会から2008年広州大会まで。ブレーメン大会で世界を驚かせた福岡春菜の「王子サービス」、日本発の「巻き込みサービス」が話題に。そして広州大会では低迷していた男子が帰化選手の活躍もあり復活、男女揃ってメダルを獲得した。
参考文献 「卓球王国」2006年9月号福岡春菜インタビュー、「TSPトピックス」1994年1月号 作馬六郎インタビュー、「卓球王国」2010年1月号 アップダウンサービス
2006年世界選手権ブレーメン大会(団体戦)、日本女子3大会連続銅メダル
ドイツ・ブレーメンで開催された2006年世界選手権(団体戦)で、日本女子は3大会連続の銅メダルを決めた。その主力となったのは、福原愛、金沢咲希、そして福岡春菜だった。
金沢は、中国・河北省出身で中国名は満麗(マン・リー)。中国ナショナルチームにまで上り詰めたがチャンスがなく、1998年に21歳で日本生命に入社し、2004年に日本国籍を取得した。姓は遊びに訪れた石川県の金沢の町が気に入ってつけたという。いい話である。
直後の代表選考会で優勝して2005年世界選手権上海大会(個人戦)に出場し、2006年1月には全日本選手権(以下、全日本)で優勝して、ブレーメン大会の代表となる。
テレビ東京の『世界卓球』では、「中国五千年の大和魂(やまとだましい)」という無茶苦茶なニックネームをつけられたが、それに恥じない(というかニックネーム自体が恥ずかしいが)大活躍をした。その戦績は、メダルを確定させた準々決勝のハンガリー戦まで5戦全勝。金沢がいなかったら、銅メダルは獲れなかったかもしれない。
この大会を最後に、女子の日本代表に帰化選手の姿は見られなくなる。