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「ありがとう、山手卓球」66年の歴史に幕を閉じた老舗卓球場

1958年に創業した、東京・高田馬場の山手卓球。全国でも最古参の卓球場のひとつが、2024年12月15日に営業を終了した。通りを見下ろす小高い丘の上から、多くの人々の人生を照らし続けた、暖かい灯が静かに消えていった。

卓球王国2025年3月号掲載

Text & Photographs by

柳澤太朗Taro Yanagisawa

高田馬場駅から徒歩5分ほど。交通の便が良く、卓球人から一般の愛好家・学生まで幅広く愛された

いろいろな方向性を考えてきましたが、山手卓球はこの建物、この造りだからこそ良かったと思うんです(富田真俊さん)

 去る2024年12月10日。『X(旧ツイッター)』に投稿された文章が、東京の卓球人の間を駆け巡った。それは東京・高田馬場にある卓球場『山手(やまて)卓球』の閉店を知らせるもの。しかも閉店は発表からわずか5日後の12月15日だった。

 「ギリギリの発表になってしまって申し訳なかったですけど、さらっと終わりたかったんです。受付に座って、皆さんが卓球を楽しむ様子を見ていると悲しくなってきて、考え込んでしまうから。発表が早すぎても、この複雑な気持ちをずっと抱え込まないといけませんから」

 時が止まったような山手卓球の受付で、富田真俊さんは訥々(とつとつ)と語った。富田さんの母・あささんが山手卓球を開業したのは、東京タワーが徐々にその威容を現しつつあった1958年3月。開業からおよそ66年と9カ月、修繕を繰り返しながら卓球場を続けてきたが、このまま続けていくのは限界に近かった。

 「母も来年90歳になりますし、相続の問題もありました。建て直して新しい卓球場にしようとしても、現在の建ぺい率だと卓球場のスペースがかなり狭くなるので難しい。10年近くいろいろな方向性を考えましたが、閉めることに決めました。山手卓球はこの建物、この造りだからこそ良かったと思うんです」(富田さん)

4台が設置されていた山手卓球。卓球台の塗装が剥(は)げた跡が、どれだけ多くのボールが打ち交(か)わされてきたのかを物語る(右下写真)

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