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真説 卓球おもしろ物語33【東京五輪で悲願の中国越え、水谷隼/伊藤美誠の混合金メダル 〈最終回〉】
〈その33〉卓球王国2023年3月号掲載
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卓球史研究家・卓球コラムニストの伊藤条太氏が、独自の視点で卓球史を紹介してきたこのコーナー。最終回となる今回は、2017年から東京2020五輪までの出来事を紹介。張本智和の衝撃的な活躍にはじまり、東京2020での日本卓球界初の五輪金メダル獲得までの日本を中心とした卓球界の主な出来事を、伊藤氏ならではの視点で振り返ります。
参考文献:読売新聞1969年2月3日付 朝刊(プロ卓球)
衝撃の2017年世界選手権デュッセルドルフ大会、姿を現した“怪物”張本智和
張本智和は、かつて中国ナショナルチームに所属していた両親のもと、宮城県仙台市で生まれた。両親が卓球スクールにコーチとして勤務(後に独立)していたため、張本はそこで1歳からラケットを握った。
練習時間は一日2時間ほどで特別に長くはなかったが、4歳で全日本選手権バンビの部(小学2年生以下)で初めて全国大会に出ると、小1から小6までバンビ、カブ(同4年生以下)、ホープス(同6年生以下)と福原愛が7連覇して以来の6連覇を達成し、怪物ぶりを発揮した。生まれたときは中国籍で“張”姓だったが、小学5年生になる春に、父と妹(美和)とともに日本国籍を取得し、“張本”姓となった。
2016年のジャパンオープンのU21で、何釣傑(ホ・クアンキ/香港)、ウーゴ・カルデラノ(ブラジル)ら格上を破って優勝して国際的な実力を示すと、同年12月には世界ジュニアでも優勝し、翌2017年世界選手権デュッセルドルフ大会代表に強化本部推薦で抜擢(ばってき)された。推薦以外の選考基準では張本の成長の速さをとらえきれなかったのだ。
その判断が正しかったことが世界選手権で証明された。張本は男子シングルス2回戦で当時世界ランキング6位の水谷隼を破り、丹羽孝希とともにベスト8に入る。
そして2018年1月の全日本では、水谷を決勝で破って優勝してしまうのである。水谷が作った男子最年少優勝記録の17歳を一気に3年も更新する14歳での優勝だった。
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不世出(ふせいしゅつ)の大選手である水谷と、それを超えるかもしれない怪物選手・張本の直接対決は、水谷の選手生命の長さと張本の破格の早熟さによって、ぎりぎりで実現したのである。
その全日本の女子シングルスで、前年優勝の平野美宇を決勝で破って優勝したのは伊藤美誠だった。変幻(へんげん)自在と言うしかない多彩かつ超攻撃的なプレーでの優勝は、日本卓球界に張本・伊藤時代が到来したことを卓球ファンに強く印象づけた。