松島輝空「水谷さんの全日本10回優勝もすごい。ただ、何回優勝するというよりも世界選手権やオリンピックでメダルを獲ることのほうが大きな目標です」
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卓球マニア養成ギブス[ようこそ卓球地獄へ] 奇天烈営業マン
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第1章 奇天烈卓球人ファイル>より<その3>
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Text Illustration by
伊藤条太Jota Ito
類希なる意思の弱さと、ずうずうしいまでの楽観性、そして勝利への渇望
2013年、田丸さんに匹敵する奇天烈な方とお会いすることができた。営業マンのYさんだ。Yさんは私と同年代の建材会社に勤める営業マンだが、私のコラムの大ファンだということで熱烈なお誘いを受け、仙台で夕食をご一緒したのだ。
この方、卓球に対する情熱は疑いないのだが、その実力はあまりに絶望的である。なにしろ高校三年の時に「横回転を返せないので先輩にアンチにさせられた」と言うのだから尋常ではない。謙遜するにしても度を越している。普通、そこまで下手だと情熱を保ち続けることは難しいはずだが、Yさんはなぜかそれを実に楽しそうに語るのだ。まるでそこにモチベーションがあるかのようでさえある。最初こそ戸惑った私だったが、途中からは調子に乗って一緒に笑わせていただくという、実に珍しい会食となったのだった(本当によかったのだろうか)。