全日本卓球で聞いた用具のこだわり2025 異質型編(小塩悠菜 伊藤槙紀 ペン粒2選手ほか)

卓球マニア養成ギブス[ようこそ卓球地獄へ]“熱海の樋口先生”
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第1章 奇天烈卓球人ファイル>より<その5>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
「人類は破滅に向かっており、それを救うのは卓球しかない」という悟りに行きつく
“熱海の樋口先生”というフレーズを聞いたことがあるだろうか。1980年代に卓球雑誌を読んでいた人なら何度か目にしたことがあるはずである。高島規郎(1975年世界三位、元全日本監督)と小野誠治(1979年世界チャンピオン)の話に必ず出てくるカリスマ指導者である。
そのエピソードは強烈である。高島が初めて樋口先生を訪ねたとき、いきなり夜の12時から練習が始まり、そのまま三泊四日一睡もせずに練習が続けられたという。疲労と睡眠不足で高島の記憶が飛んでいる疑いもあるが、とにかく途方もない練習時間だったことだけは確かだろう。あげくに樋口は知人に「あんな体力のないやつは使いものにならないからもうよこすな」と言ったというから異常どころの騒ぎではない。またあるときは、6時間ぶっ続けでスマッシュを拾う練習が続けられ、高島はその間に3回気絶したという。これはいったい、卓球の練習なのだろうか。