【タイムマシン・4】この子はダ〜〜レ?「ジュニアで世界の頂点に立ったぞ!」

卓球マニア養成ギブス[ようこそ卓球地獄へ]私の卓球懺悔録
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第2章 卓球・卓球・卓球>より<その13>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
朦朧(もうろう)とした顔で「入りません」と言っていた彼の顔が思い出される。我ながらひどい話だ。許せ長岡
卓球に関しては私もかなり失敗やら間違ったことをしてきたので、他人のことばかりも言っていられない。自分が困っただけならいいのだが、私の場合、卓球を教えるのが好きなので、他人に迷惑をかけたことも多く、慙愧(ざんき)に耐えない。この場を借りて、関係者の皆さま方に懺悔(ざんげ)をする次第である。
高校3年の夏休み、ある後輩を指導したときのことだ。ペン表の彼のフォアハンドスマッシュは、私から見ると腰の回転が不十分な手打ちで、どうにもそれが気に入らない。ところが彼は腕力があるためか、それでも結構よいボールが入るのだ。いくら私が「それじゃよいボールを打てない」と言っても、ミスもなくよいボールがバンバン入っているのだから説得力がない。彼も、私のアドバイスをどこか本気にしていないような余裕のある態度だ。もちろんそれも気に入らない。そこで私は、自分の理論を正当化するためにある行動に出た。「腕立て伏せしろ」 私は彼に、へとへとになるまで腕立て伏せをさせ、直後にスマッシュをさせ「ほら、入らないだろ」と言ったのだ(あたかも星一徹が打倒大リーグボール3号のために伴宙太に九回裏まで逆立ちを命じたかのようである)。朦朧(もうろう)とした顔で「入りません」と言っていた彼の顔が思い出される。我ながらひどい話だ。許せ長岡。