
【現役最後のインタビュー後編】上田仁「今回を最後のインタビューにしたいのです」
卓球王国PLUS独占インタビュー(一部を卓球王国7月号に掲載)後編
上田仁は、自身の考えや感覚、心理、事象を言語化する能力に長けている。
彼ほど理論的に言葉として表現できる人は卓球界でも少ない。
彼には定期的に卓球王国の連載などで執筆してほしいと考えていた。
ところが、帰国し、来社した4月に「今回のインタビューを最後にさせてください」と告げられたのだ。
インタビューを最後にする理由も上田仁らしい理由だった。
Interview by
卓球界を良くしていこうと思ったら、指導者は必要です。選手ばかりにお金が集まっているけれどもコーチもボランティアではできない

ぼく自身、日本にいる時にそれに気がつかなかった。自分のプライドを優先して、自分はできるんだ、自分は強いんだという思いで、できることをやってこなかった
●ー2年前にブンデスリーガに行って、2シーズン連続でプレーオフ進出は素晴らしい結果でした。
上田 家族と一緒に行ったけど、ぼくらよそ者をどう受け入れてくれるのか。全部は理解されないし、ぼくらも理解できない。もしぼくが試合で勝てば家族も受け入れてもらえるし、馴染みやすくなると感じました。ぼくが活躍することで、子どもたちも声を懸けてもらえるし、ぼくが一人だけで、ドイツに来ているのと違うんですね。上田仁、上田家がこの町に受け入れてもらえていることをつかみ取るまでは、ぼくも家族も苦労はしました。
試合が終わって引退となっても涙は出なかったですね。その後にチームメイトのシュテガーがぼくのところに来てくれて、ハグしながら言葉を懸けてもらって、「君がいなかったら2年連続プレーオフに行けなかった。ありがとう。次のキャリアの幸運を祈ってるよ」と言ってもらえた。ぼくは「ケーニヒスホーフェン」の町に住んだ初めての選手で、それ以外の選手というのは別の町にいて、試合の時だけに来る選手ばかりだった。それもあって、最後の試合の後にチームメイト、サポーターが一人ひとり来てくれて、言葉をかけてもらったことに泣けてきました。