こだわりすぎた男たち Vol.9 栗原 修「重量への繊細なこだわり」

[ようこそ卓球地獄へ/妄想卓球スパーク!]2009年世界選手権横浜大会・観戦記
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第3章 妄想卓球スパーク!>より <その29>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
丹羽に至ってはまだ14歳だ。こっちはもう30年も卓球をやっているのだ。「お前、いつ俺を追い越したんだ?」と言いたい
さて、2009年世界選手権横浜大会の真面目な感想を書いてみたい。
メダルを獲った岸川・水谷組や、ベスト8に入った吉田、平野・福原組の活躍は素晴らしかった。しかし私の印象に強く残ったのは、松平健太、石川佳純、丹羽孝希ら10代の選手たちの活躍だ。なんといっても興奮したのは、松平健太が馬琳を追い詰めた試合だ。会場の盛り上がりも、私が日本で経験した世界選手権史上、最高のものだった。たしかに馬琳の調子は万全には見えなかった。しかし馬琳は北京五輪の金メダリストなのだ。しかも、松平の得点は、馬琳のミスではない。松平が馬琳から先手を取り、あろうことか台上、前陣、中陣からバキバキに攻めて馬琳をブチ抜いて得点していたのだ。これが興奮せずにいられようか。タイプしようにも指はプルプルと震えるし、パソコン画面を見ている間ラリーは見られないし応援はできないしで、このときばかりは私も実況ブログをやっていることをうらめしく思った。試合後に体育館の前ですれ違った馬琳の目は泣いたように腫れていた。それほどギリギリの試合だったのだ。