
[アーカイブ石川佳純]「石川佳純」は何を語るのか。
卓球王国2023年2月号掲載より
日の丸を付けてから15年が経った。日本卓球界の中心選手として3度の五輪でメダルを獲得し、卓球人気に貢献してきた石川佳純。彼女が今回、五輪代表の選考方法について口を開いた。
それは五輪の素晴らしさと、今回の選考方法の問題点を理解した選手の声だ。
そして、彼女はその先にある「卓球愛」を語ってくれた。
石川佳純だけではなく、それは伊藤美誠もそうだった。日本の卓球界をささえたメダリストたちを苦しめた前代未聞の「五輪国内選考会」について、石川は意見を述べていた。このインタビューの数カ月後に石川佳純は現役引退を発表した。(2022年インタビュー)

「私の根っこの部分は変わっていないですね。卓球が楽しいからやっている、そこが基本です」石川佳純
Interview by
写真=花田龍之介 スタイリスト=中原正登 ヘアメイク=内藤歩 衣装協力=ドレスレイブ/ユエニ/スタージュエリー
「3回のオリンピックを経験して、自分が次にやりたいこと、やれることが新しく自分なりにあるのかと思います」
2012年ロンドン大会から3度の五輪出場で、3個のメダルを獲得。世界選手権でも混合ダブルスで優勝するなど、10年以上、日本女子の中心選手として走り続けてきた石川佳純(全農)。スポーツ界のみならず、国民の誰もが知るアスリートであり、現在、世界ランキング8位のトップスター選手だ。
東京五輪後に「再び五輪を目指すのは覚悟が必要」と語った石川。アスリートとしての最高の舞台、五輪を目指すのか。それともラケットを置く準備をするのか。彼女は自身の未来予想図をどう描いているのだろうか。
そして、前を向き、言葉を濁さずに「五輪代表の選考方法」について意見を言う。日本卓球界に貢献した彼女の言葉は果たして協会に届くのだろうか。
◇◇
●―東京五輪の直後のインタビューでは「(パリ五輪を目指すかどうかは)覚悟が必要です。自分の内側から『やりたい、やれる』という気持ちが湧いてきて、ある日、ぱちんと覚悟する瞬間が始まる」と語っていました。その瞬間は来たのですか?
石川 それは難しい質問ですね。今までと違う卓球への向き合い方があると思っています。私が(五輪を)目指す目指さないは別としても、今まではトップ選手にとって「オリンピックを目指さないと引退」という見方があったと思いますが、それは違う気がします。過去の3回のオリンピックに出て、その大会が素晴らしい場所であると思っているし、絶対目指すべき大会であるのは間違いないです。でも、それを目指すためにはやはり覚悟が必要です。
3回のオリンピックを経験して、自分が次にやりたいこと、やれることが新しく自分なりにあるのかと思います。それは大きな変化です。
●―そのやりたいことのひとつは「石川佳純サンクスツアー」(全国各地を石川が訪ねての卓球交流イベント)ですか?
石川 今まで5回やっていて、イベントのテーマは今まで応援していただいた方々への恩返しです。卓球をしている人にも、卓球をしていない人にも「卓球を楽しい」と感じてもらう良い機会なので、すごくやりがいを感じています。
●―過去にも講習会やイベントというのは数多く経験していると思いますが。
石川 卓球をやって見せるだけではないです。私自身が目標に向かって頑張ることを、卓球から、スポーツから学びました。そういう部分を伝える機会がサンクスツアーであり、このイベントによって応援していただいた方々へ直接感謝を伝えたかったんです。
「プロリーグとしてやっている試合を、オリンピックの選考基準に入れることが卓球界を盛り上げることになるのでしょうか」
●―「五輪への覚悟」という話をしましたが、卓球王国は一貫して、「このパリ五輪代表の選考方式がおかしい」という記事を月刊誌でもWEBでも主張してきました。協会側の主張も聞きつつ、先日は水谷隼さんの意見をWEBで紹介しましたが、選手の声がなかなか聞こえてこなかった。3回の五輪に出場し、そのたびに苛酷な代表レースを戦ってきた石川さんの意見を聞きたいです。