【忘れられない試合】全盛期の張継科を破ったオーストリアオープン

[ようこそ卓球地獄へ/アメリカン卓球ライフ]『WGTTC』
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第4章 アメリカン卓球ライフ>より <その36>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
ご先祖様は銀行強盗だったとうそぶくこの男、大変な短気で、とにかく負けるとラケットをブン投げて帰ってしまう
2000年にドーサンに出張をしたとき、ピータースの紹介で一度だけ卓球をしたのがウォレン・マックネイルという男である。電子メールで連絡を取り合って練習の約束をしたのだが、のっけから「自分はホビープレーヤーではなくてシリアスプレーヤーだ」と書いてきたりしてさすがアメリカ人だと思ったものである。待ち合わせの体育館にいくと、ロビーの自販機の前に卓球台が置いてあった。無いよりマシだなと思って待っていると、卓球ができるとは思えないほど太った男がふうふう言いながらやってきた。これがウォレンである。挨拶を交わして練習をしようとすると「ボールがない」と言う。そんな話があるだろうか。仕方がないので体育館の事務室に行き、無印・クリーム色の正体不明のボールを買った。弾みがメチャクチャで軟式より柔らかい。なんとかこれで卓球を始めたのだがこの男、カットマンのくせにカットどころかツッツキも入らず試合にならない。話してみると「卓球をしたのは6年ぶりだ」と言う。何なんだ一体。ひどいシリアスプレーヤーもいたものである。