優勝の本質を見てほしい。張本智和の凄さは、戦術転換の見事さと決断力にあった

張本智和の握手と「リスペクト発言」。卓球におけるフェアプレーとは何か
卓球王国PLUS独占記事「今野の眼」

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今野昇Noboru Konno
卓球はフェアプレー精神を重んじるクリーンなスポーツ。だからこそ、負けた時の態度をみんなが注視する
WTT横浜での張本智和(トヨタ自動車)の発言は、卓球におけるフェアプレーの在り方を考えさせるものだった。準々決勝で向鵬(中国)を4-2で下した張本は、試合後、中国ベンチに駆け寄り王皓コーチ(元世界チャンピオン)と握手をしようとした。しかし王皓コーチは目を合わせず、そっぽを向いたまま手を差し出した。その態度に張本は憤りを覚え、ベンチに戻ると岸川聖也監督に身振り手振りで状況を説明した。
試合後のミックスゾーンでは「中国のコーチはいつもぼくが勝つと握手をしない。王楚欽がぼくに勝った時だけ握手をする。相手に対するリスペクトがあってもいいはずだ」と語った。この発言が中国のネット上で拡散されたためか、決勝で張本が王楚欽を破った際には王皓コーチから握手を求める場面が見られた。
卓球では試合前後の握手は相手への敬意を示す習慣であり、欧州の選手は必ず相手やベンチコーチと強い握手を交わす。全日本選手権でも特に男子はこれが当たり前だ。一方、女子では軽いタッチで済ませる場面も見られる。かつて日本選手は試合前後に主審・副審や応援席にまでお辞儀をするという、やり過ぎとも言える儀式化もあった。