
戸上隼輔 次の扉へ。「最終目標はオリンピックの金メダルです」
卓球王国2025年10月号掲載 戸上隼輔(井村屋グループ/オクセンハウゼン)前編
日本を離れ、ドイツで過ごしたこの1年は、戸上隼輔にとって充実した時間だった。もしTリーグにいれば、戸上は好条件でプレーできただろう。しかし、移動や食事、練習環境が整った日本をあえて離れ、彼が求めたものはドイツにあった。
世界選手権では男子ダブルスで金メダルを獲得し、ブンデスリーガでもチーム優勝の立役者となった。次に戸上が開ける扉の向こうには、さらに高い世界の壁が待っている。

Interview by
「ドーハは通過点です。自信にはしますが、最終目標はオリンピックの金メダルです」

[とがみ・しゅんすけ]
2001年8月24日生まれ、三重県出身。2022・23年全日本選手権優勝、21年世界選手権ダブルス3位、パリ五輪団体ベスト4。25年世界選手権ドーハ大会で男子ダブルス優勝、シングルスはベスト8。24~25年ドイツ・ブンデスリーガでは「オクセンハウゼン」の優勝に大きく貢献した。世界ランキング26位(8月19日現在)
世界選手権、1試合1試合が本当にしんどかったです。特に張本との試合は、自分としてもきつかったですね
5月の世界選手権ドーハ大会で、64年ぶりとなる男子ダブルスの金メダルを獲得した戸上隼輔。シングルスでは張本智和(トヨタ自動車)、ヨルジッチ(スロベニア)を破り、準々決勝ではモーレゴード(スウェーデン)を相手にリードを奪いながらも逆転負けを喫し、46年ぶりの日本男子のシングルスメダルをあと一歩で逃した。
大会後はドイツ・ブンデスリーガのプレーオフ決勝で単複2点をあげ、所属する「オクセンハウゼン」を優勝に導いた。Tリーグのチームからの誘いを断り、昨年末から単身でドイツへ渡った戸上。その成果はドーハで確かに花開いた。
まずは、その世界選手権を振り返ってもらう。
◇◇
●─世界選手権ドーハ大会が終わってしばらく経ちましたが、自分の中ではどんな大会でしたか?
戸上 結果的にはすごく良い大会で、楽しかったし、今後につながる自信を得られる大会になりました。ただ、実際に戦っている時は苦しくて、しんどい大会でした。
●─どのあたりが苦しかったのでしょうか?
戸上 やっぱり世界選手権はオリンピックの次に大きな大会なので、重圧がかかります。あの大舞台にすべてを懸けている選手ばかりで、かつ日本を背負って戦う大会なので、期待以上の結果を出さなければならないという気持ちが、自然と芽生えてしまいます。そういう中での戦いは1試合1試合が本当にしんどかったです。特に張本(智和)との試合は、自分としてもきつかったですね。