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[ようこそ卓球地獄へ/アメリカン卓球ライフ]チャックとウォレン
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第4章 アメリカン卓球ライフ>より <その39>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
二人の卓球を見ていると、たしかに見事に基本がなっておらず、私のような「教えたがり」にとっては、格好の獲物であった
ドーサンに赴任した直後は賑わっていた『WGTTC』だったが、それは最初だけで、ほどなくチャックとウォレンと私の三人だけになってしまった。私は彼らから一目おかれ、「コーチしてくれ」と言われていた。彼らは、まともな指導を受けたことがほとんどないので指導に飢えていたのだ。二人の卓球を見ていると、たしかに見事に基本がなっておらず、私のような「教えたがり」にとっては、格好の獲物であった。
たとえばチャックはドライブ型なのだが、フォアハンドを体の回転をまったく使わずに腕だけで打つ。足はほとんど動かさず、よほど遠くにボールが来たとき以外は棒立ちである。それでもある程度やるのだから身体能力は高いのだ。一方、ウォレンはカットマンなのだが、これも足をほとんど動かさず、特にバックカットを左足前のまま体の正面で打球をするので、守備範囲は狭いしスイング速度は出ないしといった具合だ。