奥深き中国式ペンの世界 ブレード・グリップ検証

[ようこそ卓球地獄へ/アメリカン卓球ライフ]卓球クリニック
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第4章 アメリカン卓球ライフ>より <その42>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
むしろ「またここに来てしまったか」という気持ちになったことが自分でも可笑しかった
任期の3年はあっという間に過ぎた。帰任することになった2010年の春先、ピータースから久しぶりに卓球の誘いがあった。週末に彼の家の卓球場で泊りがけで「卓球クリニック」を開催したいので、その講師をやってくれないかというのだ。受講生は彼を含めた4人ほどで、謝礼も払うという。
そのちょっと前、ピータースが「来月から放射線治療に入るので卓球はもうできない」と言うので、最後のつもりで卓球をし、それから連絡をとっていなかったのだ。嬉しいことにそのピータースがまだ元気で、そればかりか、72歳にしてこの私から卓球を習いたいというのだ。どうしてこれを断れようか。謝礼など要らないと、喜んで引き受けたのだった。
土曜の昼頃ピータースの家に着くと、いつも彼が卓球を教えているという初心者の大学生2人がピータースと汗を流していた。前の晩から泊まっているという。アメリカでは卓球をする人が少ないので、やっている人はものすごく卓球が好きなのだ。
ピータースの家に行ったのはちょうど10年ぶりだったが、そのときの印象があまりに強烈なためぜんぜん久しぶりのような気がしない。むしろ「またここに来てしまったか」という気持ちになったことが自分でも可笑しかった。