
偶然か、必然か。メガヒットした巨人[ファスターク G-1]
「卓球グッズ2020」[ロングセラーモンスター]
なぜ彼らは怪物ラバーになったのか
卓球市場では毎年のように商品が発売されて、そして消えていく。その中で長くユーザーに愛されるロングセラーのアイテム。
50年の間、売れ続けている『マークV』。10年間、中級者の支持を得ている『ヴェガ』
発売してから9年経つが、2015年から用具ランキングで1位をキープする『ファスタークG-1』。
ロングセラーを続ける商品が怪物になった理由とは何か。
それは必然だったのか、偶然なのか、巧妙なマーケティングなのか。


ファスターク G-1
●スピン系テンション裏ソフトラバー
●¥6,600(2020年)→¥7,480(2025年/税込)
●2010年11月発売 ニッタク
2010年に発売されたが、2015年2月に『テナジー』の値上げで潮目が変わった
2010年は用具の激動の時代だった。08年にスピードグルーが禁止となり、その年に揮発性接着剤に頼らない『テナジー』(バタフライ)が発売された。
それを追いかけるように09年11月に発売されたのが『ヴェガ』(XIOM)。スピン系テンションの高価格ラバーの『テナジー』に対し、低価格で発売され、大ヒットした。
09年の秋、日本卓球(ニッタク)の北岡功社長はドイツのラバー工場を訪れていた。スピードグルー禁止後に、トップ選手が使えるスピン系テンションラバーを必要としていたニッタク。グルーが禁止される前にいわゆるブースター効果のある『スピードアクセル』という補助剤も爆発的に売れていたニッタクだったが、それも「後加工」として禁止になったために、北岡は新しいラバーを模索していた。そして、それから1年後に発売されたのが『ファスターク G-1』(以下G-1)だった。
10年11月にリリースされた『G-1』は、『テナジー』の後追いというよりも『ヘキサー』(アンドロ)、『ヴェガ』、『バラクーダ』(ドニック)、『エクスプロード』(ヨーラ)、『ラクザ』(ヤサカ)がすでに発売されていて、後発のスピン系テンションラバーとなった。卓球王国のバックナンバーを見ても、10年7月発売号でティザー広告を出したかと思いきや、同年11月発売号ではいきなり前触れもなく「Now On Sale!」(発売中)という広告で『G-1』が登場している。当時、宣伝よりも先に商品が入荷し、選手への提供や宣伝も急きょ行われた感がある。