
世界最強軍団の素顔。中国選手がWTT横浜で見せた王者たる理由
卓球王国2025年11月号「WTT、熱狂の横浜は何を語るのか。」
ミックスゾーン(取材エリア)で、選手から素通りされたり、インタビューを拒否されながらも、楊奇真&彩乃のコンビは食い下がり、言葉を引き出した。そんな彼らが感じたことは何だったのか。
写真・取材=楊奇真・楊彩乃

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なぜ中国は卓球最強国であり続けるのか? その答えは、技術や体力だけでは説明できない。
WTTチャンピオンズ横浜の5日間。世界最強軍団と呼ばれる中国卓球チームの選手たちを間近で見つめ続けた私(楊彩乃)が目撃したのは、これまで日本のメディアではあまり報じられることのなかった選手たちの「リアルな姿」だった。試合前の緊張した表情、試合中の鋭い眼差し、そして試合後の安堵の笑顔。世界の頂点に君臨する王者でありながら、同時に等身大の人間らしさを持つ彼らの魅力に、私は心を奪われた。
【人間らしさ】「コート外で見せる素顔の魅力」
今大会最大のサプライズ――それは世界ランキング1位の孫穎莎を破り、見事優勝を果たした陳幸同(中国)の快挙だった。「どのようにお祝いをしたいですか?」取材陣のこの質問に、陳幸同は少し考えてから、満面の笑みでこう答えた。「ええ~~、チームメイトに美味しいご飯をおごってあげるかなあ」
シンプルで飾らない答え。しかし、その自然体の言葉からは、個人の栄光よりもチームメイトを大切にする温かい人間性が伝わってきた。プレー中に見せるクールで集中した雰囲気とのギャップが、彼女の魅力を際立たせる。実際、陳幸同は大会期間中、メディアの取材にいつも笑顔で答え、多くの関係者を魅了していた。
一方、敗れはしたものの、その存在感で会場を圧倒し続けた孫穎莎。世界ランキング1位を100週以上維持し続ける絶対女王に、率直に聞いてみた。
「今はスーパースターとなり、街を歩くことも難しいと思いますが、それを不自由に思うことはないですか?」