【アーカイブ／Another Story】香坂亮志／情熱を失った男に、再び火を灯した44ミリのボール

卓球王国2016年11月号掲載［アナザー・ストーリー／香坂亮志］

［Another Story 疾走するアスリートたち］香坂亮志（天狗乃舞）

こうさか・りょうじ
1979年11月7日生まれ、東京都墨田区出身。京卓ジュニアで中学1年生から卓球を始め、実践学園高へ進学。全国ラージボール大会で初出場の2013年度大会から4連覇中。硬式、ラージボールともに右シェーク両面表ソフト速攻型。ヨーラジャパン契約選手

名門で過した卓球漬けの青春時代と突然失った卓球への情熱

　2013年6月、岩手県奥州市で開催された全国ラージボール大会。初出場の男が、男子シングルス一般Aで、予選リーグから決勝までオールストレート勝ちの完全優勝を果たした。その男の名は香坂亮志。長身細身のルックスに、クールな佇（たたず）まい。台から下がった位置でのロビング対スマッシュの攻防や、前陣でのバチバチの打ち合いなど、派手なラリーが目立つラージボールの試合会場で異彩を放つ前陣攻守。相手の強打を巧みなブロックでさばき、甘いボールを一撃のフォア強打で仕留める。涼しい顔で勝利を収めるその姿は、どこか優雅だ。
　衝撃の全国ラージデビューから今年の全国ラージまで、香坂はシングルスで一度も負ける事なく4連覇を続けている。そんな無敵のラージチャンピオンだが、全国ラージで優勝するまで彼の名を知るものは多くはなかった。学生時代から、東京都内では「両面表ソフトの速攻型」として名の知れた存在だったが全国的には無名。そんな男が一躍全国チャンプに躍り出たのだ。契約を結ぶヨーラからは自身の名前を冠したラケットもリリース。今や名実ともにラージ界の“キング”である。