全日本3連覇の「ファースト」。30過ぎの青森山田軍団、丹羽復帰、そして浜野の男気
[ようこそ卓球地獄へ/たまには真面目な卓球論]史上最強は誰か
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第5章>より <その48>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
強さの基準には次の三つがある。すなわち「実績実力」「相対実力」「絶対実力」だ
日本卓球界の史上最強は誰かということがたびたび話題になる。卓球マニアならではの楽しみの一つだ。「齋藤清に決まっている」と断定する人がいるかと思えば「いや、小野誠治だ」「河野満を知らないのか」と息巻く人がいたりして、実に収集がつかなくて楽しい。これというのも、そもそも何を議論しているのかはっきりしていないからなのだ。
強さの基準には次の三つがある。すなわち「実績実力」「相対実力」「絶対実力」だ。これら三つの基準を混同したまま議論をするからわけがわからなくなる。順を追って説明しよう。
まず「実績実力」だが、これはその時代にどれだけ飛び抜けた実績を残したかである。当然、比較は世界だから、この基準では、世界選手権で十二個の金メダルを獲った荻村伊智朗(一九五四年、一九五六年世界チャンピオン)が議論の余地なく史上最強である。これだけの成績を残した日本人は他にはいない。しかし荻村の才能や努力が他の時代の強者たちと比較して飛び抜けていたかとなると、それはないだろう。なぜなら荻村は、当時の日本国内ですら無敵というほどではなかったからだ。彼が世界で実績を残すことができたのは、攻撃卓球という新しい戦術と、スポンジラバーという用具の技術革新があったためだ。

