全日本3連覇の「ファースト」。30過ぎの青森山田軍団、丹羽復帰、そして浜野の男気
[ようこそ卓球地獄へ/たまには真面目な卓球論]チャンピオンの資質
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第5章>より <その49>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
謙虚をよそおった努力自慢なのであり、だから選手たちはとても気持ちよく語るのだ
水谷隼の発言が痛快である。2011年全日本で5連覇を成し遂げた直後のインタビューで「できるだけ簡単に優勝したかった」と語ったのだ。なにかと弱腰な発言が多い日本の卓球選手の中にあって、これだけ堂々たる態度はなんとも頼もしい。吉田海偉が全日本で初優勝したときに「優勝、当たり前です」と語って以来の痛快さである。
謙虚な態度が美徳とされる日本では、こういう発言を傲慢だと眉をひそめる人もいるだろう。しかし私は逆に、全日本チャンピオンがそれくらいの気概がなくてどうするんだと思う。
よくトップ選手がインタビューなどで「自分は才能がないから努力するしかないと思った」などと言うことがあるが、こういうのは本当の意味で謙虚だとは思わない。卓球の才能がないというのはただそれだけのことだが、努力する能力は、卓球以外のすべてのことに通用する人間的な価値である。だから実は前述のような台詞(せりふ)は、謙虚をよそおった努力自慢なのであり、だから選手たちはとても気持ちよく語るのだ。いっそのこと「いやあ、まぐれまぐれ。テキトーにやったら勝っちゃったんで。つうか……あれ? 何の質問だっけ?」ってなぐらいの方がバカだと思われるので真の意味で謙虚だと思うのだがどうだろうか(なわけないか)。

