[People]淡路浩志「子どもたちが部活動でコツコツ努力する姿を見ると、やりがいを感じます」
卓球王国2026年2月号
PEOPLE 淡路浩志[青森県八戸市卓球協会理事長]

あわじ・ひろし
1967年5月2日生まれ、青森県八戸市出身。小学生の時から卓球を始め、中学・高校、そして東京学芸大でも卓球を続けた。卒業後、八戸市に戻り、小学校の教員を務め、八戸市卓球協会の事務局の仕事もこなしてきた。現在、八戸市轟木小学校校長、そして3年前から八戸市卓球協会理事長を務める

私は『部活をやりたい』という気持ちがあったからこそ、青森に戻って教員になった
八戸市轟木小学校の校長でありながら、八戸市卓球協会理事長も務める淡路浩志。自身もプレーを続けながら、長年にわたり八戸の小学生の卓球の普及に尽力してきた。
淡路は小学4年から卓球を始め、中学・高校、そして東京学芸大でも卓球部に所属。「関東学生選手権でシードまで行ったのが最高。学芸大は当時3部リーグで、インカレにも一度出場したことがあります」と当時を振り返る。卒業後は地元・八戸に戻った。
「学校で部活動の指導をしたかった。青森は今でも小学校単位のチームがあります。ただ、今は先生が指導から離れ、保護者や外部コーチに頼るところが増えていて、どんどん選手の数が減っています」
高校の先輩が協会の仕事に携わっていた縁もあり、2002年から八戸市卓球協会の事務局に入り、現在は理事長3年目となる。
「教員の道を選ぶ際には、中学校の体育教師になりたくて採用試験も受けたのですが、当時は採用されませんでした。たまたま持っていた小学校免許で小学校に採用され、その学校に卓球部があったので、1年目から指導ができ、夢中になって取り組みました」。まだ全日本ホープス・カブ・バンビの部がなかった頃、青森では小学生の県大会があり、それが強さの源でもあった。
「今思えば、経験のない先生でもそれぞれの学校で一生懸命に指導していた時代です。子どもの数も多かった。私は『部活をやりたい』という気持ちがあったからこそ、青森に戻って教員になった面があります。
教育という観点でも、部活はあったほうがいい。教室の勉強とは違い、その子の個性を発揮できる。学校の成績が振るわなくても、部活動でコツコツ努力して賞状を持って帰ってくる。その姿を見ると、やりがいを感じます」
ところが15年ほど前から「部活は本来、先生の仕事ではない」という流れが強まり、小学校で部活を指導する先生が減った。以前は八戸市内の小学校大会に600人ほどの子どもが参加していたが、現在は200人ほどと3分の1にまで減少している。「保護者が必ず誰か来なければいけない」「外部コーチが必要」など、親の負担が増え、送り迎えの問題もあって、チームとして存続が難しくなる。学校チームがなくなれば、10人単位で競技人口が減ってしまうのだ。
八戸市卓球協会ではサポート事業として、週末を中心に指導者派遣も行うようになっている。「子どもと長く接してきて、良いことも、悲しいことも、悔しいこともたくさんあります。私はしつこい性格なんだと思います。選手をそれほど強くはできていませんが、新しい子が来れば『なんとか強くしたい』と思う。何より、私自身が一緒に練習したくて教えている。子どもたちが早く上手になって、私の練習相手になってほしい、そんな気持ちで取り組んでいます」。
かつて「卓球王国」と言われた青森県は、青森市、弘前、八戸、むつ、黒石などが競い合ってきた。「最近は全国で勝てていませんが、また勝てるようにしたい。全国で勝つため、そこに少しでも近づけるように取り組んでいます」。口数は多くないが、青森には淡路浩志のような熱い男がいる。
(文中敬称略)



