近藤欽司［夢に向かいて］第五章 2 ─「はめて点を取る、相手のやりたいことを外す」ことが卓球の面白さ

2025年夏に急逝した、元女子ナショナルチーム監督の近藤欽司氏の著書『夢に向かいて　〜インターハイとともに歩んだ卓球指導人生40年〜』（2004年1月発行/絶版）。日本女子監督として世界選手権でメダルを獲得。インターハイでは監督として8度の全国優勝を成し遂げた。勝てない時期があり、もがいた。大病をきっかけに、考え方を変えた──。指導に悩む人、試合で勝てない人にオススメの指導書を、王国PLUSで復刊。

第五章〜指導術その二〜　試合で役立つ練習とは何か

※内容はすべて2003年12月現在

■ 相手の嫌なことを試合でできるようにする練習

　練習の重要性については、いろいろ経験をする中で反省し、改革を重ねてきました。そのことを一番強く感じたのは、ベンチコーチとして選手にアドバイスをする時でした。

　選手に、練習していないことを試合で要求しても、急にできるわけがありません。果たして試合でアドバイスした内容を、選手が実際に練習してきたかどうか、一度自分のアドバイスをテープレコーダーで記録してみました。そして、アドバイスした内容を意外に練習していないことに気づいたのです。

　ゲーム間のアドバイスの内容で気がついたことは、相手の嫌なことをする練習が不足している点です。例えば、試合で選手に「相手のミドルを突け」と言っても、意外とミドルに打つことはできません。ふだんから相手のミドルを突く練習が必要です。その方法として、相手の台の左右にタオルを敷いてミドルだけ空けて、徹底的にそこをつかせる練習です。あるいは、フォアかバックかどちらかのコースを攻めていくケースを想定して、半面にタオルを敷いて、空いている部分にボールを打つ練習をしておけば、試合の中でも実行できるようになります。