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【People】本坊啓史朗[とにかく、後悔のないような生活をすること]

卓球王国2026年2月号掲載 本坊啓史朗[東京科学大]

文武両道の理想形。苦労を乗り越え
たどり着いた自然体の競技姿勢

 理系最高峰の難関国立大で勉学に励みながら、関東学生64強、全国国公立大学大会優勝など、卓球でも好成績を上げている本坊啓史朗。その文武両道の歩みを聞いた。

名門道場で腕を磨いた小・中学時代
進学校で全国高校選抜準優勝の好戦績

 本坊は、小学4年の時、4つ上の兄と同時に卓球を始めた。東京の「礼武卓球道場」に通い、6年の時、チーム事情もあって攻撃型からカットマンに転向。中学に上がると毎日のようにラケットを握るようになり、礼武道場の夜間練習に来ていた安田学園中の伊藤礼博(現日本大/24年全日本ダブルス王者)や中川泰雅(現同志社大)などと練習を積んで力をつけ、2年時には千葉県中総体でチャンピオンとなった。

 中学3年時にも関東大会で全中出場がかかる決定戦まで勝ち上がった本坊だが、高校は県内でも有数の進学校である市川高に進んだ。

 「親に日頃から『勉強が第一で卓球は第二』と言われていたこともあり、卓球で高校に行こうとは考えていませんでした」

 ただ、他の進学校に行く選択肢もあった中、市川高を選んだのは、「高校の先輩に県チャンピオンがいて、その人に教えてもらえる」という話を聞いたから。高校に入ってからも東京の「シェークハンズ」に通い、『デスカット』で有名な平屋広大コーチ(元全日本ベスト32)に指導を受けるなどして腕を磨き、2年時には全国高校選抜大会のシングルスで準優勝という好成績を叩き出した。

 「スポーツの成績と内申点の推薦で高校に入っておきながら、それまで目立った成績を残せていなかったので、その時は、自分を誘ってくれた先生に恩返しができたと思って満足感がありましたね」(本坊)

2021年の全国高校選抜大会シングルスで準優勝となった当時の本坊

苦しんだ大学受験。浪人生活を経て
東京科学大卓球部でのびのびと活躍

 だが、「本道」の大学受験では苦しんだ。2年時まで卓球に力を入れていたことで、市川高校における学級編成では、難関大学受験のための「選抜クラス」入りを逃し、「一般クラス」にいた本坊。受験した東京工業大(現東京科学大)・早稲田大・慶應大・上智大のすべてで不合格となり、浪人の憂き目に遭った。

 「毎日、予備校で朝1番から夕方まで授業を受け、夜の9時まで自習室にこもる生活でした。行き帰りの駅で同年代の大学生を見るのがつらかった。二度とやりたくないです」。

 地獄の浪人生活を耐え抜いた本坊は翌年、晴れて第一志望の東京工業大工学院に合格。現在は、念願だった機械工学の勉強に精を出しながら、卓球部での活動やカフェでのバイトなども楽しみ、学生生活を謳歌している。

非常に雰囲気の良い東京科学大卓球部。みんなで決めてくれたポーズは大学名「Science Tokyo」の「S」
東京科学大卓球部の規定練習は週に2回。あくまで学業優先の中での部活動だ

 大学3年となった2025年の3月には、前年の全国国公立大学大会での活躍が認められて、毎年「国公立大選抜選手」が派遣されている欧州遠征に参加。ドイツの『デュッセルドルフ』や『グレンツァオ』でプロ選手の練習を見学したり、ブンデスリーガの試合を観戦したり、ユースナショナルチームの選手たちと練習を行ったりして、貴重な経験を得た。

デュッセルドルフ訪問時に、現地のコーチ陣と国公立大選抜メンバーで記念撮影。とても良い雰囲気だ(写真:本人提供)
グレンツァオ訪問時、国公立大遠征メンバー全員で集合写真。練習、交流、観光で充実の2週間を過ごした(写真:本人提供)

 その成果もあったか、同年6月の関東学生選手権で5回戦進出(ベスト64)、8月の全国国公立大学大会優勝(東京工業大時代含め、東京科学大の選手として初)と、好成績を連発している。

25年全国国公立大学大会でシングルス優勝を成し遂げた本坊(右から3人目)を、一緒に欧州遠征へ行った友人たちが祝してくれた(写真:本人提供)

 ただ、現在の本坊の練習量は非常に少ない。ラケットを握るのは、基本的に週に2回の大学の規定練習くらいのもので、あえて「3日連続では練習しないようにしている」そうだ。

「大学に入ってから気づきましたが、ぼくは『詰めすぎない』ほうが向いているタイプみたいです。卓球の強豪校などに進んでいたら、潰れていたかもしれません」。

 そうは言っても、卓球好きの本坊。練習日以外でも、御内健太郎や塩野真人など、お気に入りの名カットマンの動画を見て、日々研究を行っている。

練習量は少ないが、動画視聴による研究で実力を伸ばしている本坊

学生卓球はいよいよ最終学年へ
文武両道を目指す若者への助言

 今後は、4年まで学生選手を続け、学部卒業後は修士課程に進む意向だ。進学・就職後も卓球は趣味として続けていきたいと話す。東京科学大の同学年で卓球部主将の小濵幸大は「本坊がいる間に、何とか関東学生リーグ3部に上がりたい(現在は4部)」と話し、本坊も「1度は3部でプレーしてみたい」という野望を持つ。その願いを叶えるためのラストチャンスは、26年の春季リーグだ。

「本坊がいたから科学大卓球部で頑張ってみようと思った」と語る小濵主将(左)。同期の盟友・本坊と共に関東3部昇格を目指す

 これまで、「文武」を高いレベルで両立してきた本坊。同じような道を歩みたい・歩ませたいと願う子どもたちや保護者は少なくないだろうが、そのコツを聞くと、次のように語ってくれた。

 「ぼくの場合はまず、金銭的にサポートしてくれた親や、中学時代の2人の先生、高校時代の恩師など、熱心な人たちに恵まれていました。そのうえで、ぼく自身『負けず嫌い』だったので、勉強でも卓球でも負けたくなかった。大学受験でも、レベルを落として違う大学に行くことはせず、あくまで第一志望にこだわりました。とにかく、後悔のないような生活をしてほしいと思います」。

(文中敬称略)

■ PROFILE ほんぼう・けいしろう
2003年7月10日生まれ、千葉県出身。小学4年で卓球を始め、妙典中2年の時に千葉県中学校総体で優勝。市川高に進み、2年の時に全国高校選抜大会シングルス2位。1年間の浪人生活を経て東京工業大(現・東京科学大)工学院に進学。3年時に関東学生選手権でベスト64、全国国公立大学大会優勝。右シェークハンドカット+攻撃型