【アーカイブ/Another Story】坂本竜介/かつて怪童と言われた男
[ようこそ卓球地獄へ/卓球映像評論]DVD『アウト・オブ・コントロール』
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第6章>より <その60>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
「卓球はスポーツというよりむしろ芸術です。我々はこのスポーツの美しさを見る目を養わなくてはなりません」
まったく何から書いてよいやら。とにかく素晴らしいDVDが卓球王国から発売された。
監督は、今やドキュメンタリー映像作家として活躍中で、最新作『世界一美しい本を作る男』が日本でも公開されたヨルグ・アドルフだ。その彼がまだミュンヘン・テレビ映画大学の学生だった一九九九年、卒業制作として、かつて熱中していた卓球を題材としたドキュメンタリーを作ることを思いついた。タイトルは『Klein, schnell und außer Kontrolle(小さい、速い、制御不能)』で、卓球競技の神秘的世界を表している。このタイトルだけで並の作品ではないことがわかる。
アドルフは、当時18歳だったティモ・ボルと、同じく20歳だったラース・ヒールシャーが、地元ドイツのブレーメンで開催される2000年ヨーロッパ選手権を目指す様子を15カ月間にわたって密着取材し、見事なドキュメンタリーを作り上げた。カメラは試合会場や練習場はもちろん、ロッカールームやシャワールーム、自宅といったプライベートまで追い、若い二人のプロ卓球選手の日常を映し出す。

