[なぜヴィンターはアンチを選んだのか]ミュールバッハ「彼女のバックはまだ50%程度。限界が見えない」
卓球王国PLUS独占インタビュー「なぜザビーネ・ヴィンターはアンチラバーにしたのか」その2
[ヘルマン・ミュールバッハ]のインタビュー
30歳を過ぎてもなお、ザビーネ・ヴィンター(ドイツ)は変革を求めていた。現状に甘んじていては、もはやドイツ代表の座を勝ち取ることはできない――。その危機感が、ハードヒッターである彼女に「バック面をアンチスピンラバーに変える」という大胆な決断を下させた。
しかし、その道のりは険しかった。周囲からは批判を浴び、一時はドイツ連盟からの支援打ち切りすら危ぶまれる状況にまで追い込まれた。そんな彼女の背中を強く押したのが、ヘルマン・ミュールバッハだった。「今のプレースタイルを続けることには限界がある。ならば、この難解な『アンチスピン』という新境地に挑むのは、むしろベストなタイミングではないか」。彼のその言葉が決定打となった。
こうして、常識を覆す「奇跡のモデルチェンジ」が幕を開けた。

ヘルマン・ミュールバッハ(Hermann Mühlbach / GERMANY)
37歳。ドイツU18の元チャンピオン。高校卒業後はプロの道へ進まず、大学で数学とコンピューターサイエンスを学びながらブンデスリーガ2部でプレーした。ナショナルチームのアシスタントコーチを経て、4年間ルクセンブルクのコーチを務めた後、ESN(世界最大のラバーサプライヤー)グループの「Spin Sight(スピンサイト)」に入社。用具に精通し、ブンデスリーガ1部で活躍するルカ・ムラデノビッチ(ルクセンブルク/アンチラバー使用)の指導も行った
Interview by
最も効率的でベストな方法はアンチスピンでした。アンチは球足がずっと遅いので、コントロールがしやすく、かつ自然と変化が出るからです

サビーネが使っているのは普通のアンチではありません。本当に、ツルツルのアンチスピンラバーです
●―通常、インドの選手などでアンチや粒高を使っている選手を見ると、アスリートとしての(身体的な)レベルはそれほど高くなくても、前陣に張り付いてラケットを反転させたりしてプレーするのが一般的です。それがアンチや粒高を使う選手の典型的なスタイルですよね。ですが、ザビーネ・ヴィンターのプレースタイル変更の始まりは他の選手とはかなり違いますね。
ヘルマン・ミュールバッハ(以下HM) このスタイルはモダン・カットマン(現代的な守備選手)と同じです。成功するためには守備と攻撃、両方を習得しなければなりません。2つのプレースタイルを学ぶのはより困難ですが、アンチを使ったこの「インド流スタイル」は、守備でありながら台に近い位置でプレーするため、相手に時間を与えず、より危険な存在になれます。
ただし、そのためには(ルクセンブルクの)ルカ・ムラデノビッチのように、高いレベルのアスリートである必要があります。彼はブンデスリーガでもオフチャロフを3-0で破り、その前にはウーゴ・カルデラノにも勝っています。彼の攻撃レベルはまだ(ザビーネほど)トップクラスではありませんが、それでもトップ選手に勝てるのです。
ザビーネの場合、攻撃レベルはすでに世界トップクラスです。そこにアンチスピンが加わることで、攻撃のチャンスをより多く作り出せるようになりました。つまり、私たちの狙いは「両ハンドでの攻撃」を成立させることにあるのです。加えて、ザビーネはアンチスピンでバックハンドだけでなく、フォアハンドのレシーブやフォアブロックに挑戦し、使い始めています。

