呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
[卓球本悦楽主義5]何度読んでもゾクッとする凄み。素晴らしく濃厚な荻村ワールド
〈卓球専門書の愉しい読み方5〉卓球王国2004年5月号掲載
Text by
伊藤条太Jota Ito
「卓球競技を見るための本」
■荻村伊智朗・著[ 昭和57年 同文書院]※現在は休刊
何度読んでもゾクッとする凄み。素晴らしく濃厚な荻村ワールド
タイトル通り、卓球を見て楽しむための本である。著者は卓球の生(いき)神様※注荻村先生(本の帯にこう書いてあるのだ!)。本の裏カバーには「スポーツの見どころシリーズ」と題して他のスポーツの「見るための本」が8タイトル並んでいるので、企画は出版社によるものだろう。卓球の面白さを世に伝えようと、はりきって筆をとった荻村の様子が想像できる。
(注:荻村伊智朗氏は94年に死去)
荻村はまず、スポーツを見て面白いと思う要素を二つあげている。ひとつは、応援している選手の勝敗への興味による面白さ。もうひとつは、選手の鍛えられた作品としての技を見る面白さである。
では、何がおもしろくないか、というと、たとえばレベルの低い技、練習不足による技の低下、くせのある動き、くふうしていない動き、鍛えていない体や運動能力、弱い気力や頭脳、低い風格とマナー、このようなものは、決しておもしろいとはいえません。
わざわざ「面白くない例」のほうを詳しくあげるあたりに荻村ワールドが感じられ、うれしくなってしまう。