Another Story 坂本憲一/前編「マスターズでみんなが頑張る姿を見るのが好きなんですよ」
卓球王国2024年8月号掲載「Another Story」全文掲載
2024年11月の全日本選手権マスターズの部・ハイシックスティ(65歳以上)で、男子では史上初となるマスターズ通算20回目の優勝を果たした坂本憲一。
1970年代後半から80年代前半にかけて、日本のトップクラスで活躍した坂本。インターハイと全日本学生を制し、1981年全日本選手権準優勝、1979・81・83年世界選手権3大会連続代表などの華麗なキャリアを誇る。そんな坂本が67歳の今もなお、マスターズでのプレーに情熱を燃やし続けられるのはなぜなのか。「ミスター・マスターズ」の素顔に迫った。
Text by Taro Yanagisawa
■Profile さかもと・けんいち
1958年1月10日生まれ、神奈川県出身。六角橋中1年時に卓球を始め、相模工業大学附属高(現・湘南工科大学附属高)2年時に全日本ジュニア準優勝、3年時にインターハイ優勝。日本大に進学し、78年全日本選手権混合複優勝、78年全日本学生選手権優勝。日産自動車に入社2年目の全日本選手権で男子シングルス準優勝。世界選手権は1979年ピョンヤン大会から3大会連続出場を果たした。全日本マスターズは前身の全日本社会人・年齢別の部を含めて通算20回優勝。
坂本は本当に卓球が好きなんですよ。
そして卓球への情熱と探究心が衰えない。
凄いと思いますね(河島国男)
「サービスがうまく出せないんじゃ、キツいなあ……」
2024年11月2日、全日本マスターズの部·ハイシックスティ(65歳以上)の準決勝を翌日に控えた夜。ひとり目を覚ました坂本憲一は、何度もサービスの素振りを繰り返した。
「初戦からうまくサービスが出せなくて、『おかしいなあ』と思いながら試合をやっていたんですよ。でも素振りで『明日はこれでやってみよう』というイメージがつかめて、準決勝は思いどおりのサービスが出せました」
ちなみに準々決勝までの4試合で、落としたゲームは1ゲームだけ。それでも自分のプレーに納得がいかず、夜中にパッと目が覚めてしまう。
それが「ミスター·マスターズ」の実像である。